RECORD

Eno.115 古埜岸姉弟の記録

蝕む毒の行方 - 下弦 -

「お前のこと、“この世で最も憎い神”だと思っていましたが、
 どうしてだかわからなくなったであります!」


「はァ!?」


















「このインチキカラクリ野郎!」


「なぁにが倒壊知らずだ!
 こいつを置いとけば家が倒れずに済むなんざ大嘘じゃねえか!」


「いえ、そんな……」


「あたしの家もだよ!
 台所が潰れたせいでメシが炊けないじゃないか!
 どうしてくれるのさ!」


「う……
 うううう、すみません」


















「はしらぎさまが、守ってくれない?」


「……もう寝ましょう。
 …………おやすみなさい」


















「人形」


「人形や」




「あの森にて、拙者は御主を拾いましたね。
 拙者がどうしてあの森にいたのか……」




「…………?」


「あの人間たちを見ていたからです。
 御主の大切な、主と奥方を殺めるところを見ていたからです」


「あの夫婦を殺めろと
 焚き付けたのは荒ぶる神。拙者……」




「え、ァ……なんで……?」




そうだっけ?

ずっと、騙してた?



そうか。

恨めしい神は

恨めしい神とは──

































「はしらぎさまの物語には、3つの柱がそびえている。

 破壊を尽くす神
 神に焚き付けられた人
 そして、守り神と呼ばれしもの

 いずれが欠けても、天秤は傾きまする」


「御主は幽鬼。『守る』権能の正体は『怨嗟』。
 破壊を尽くす神を憎むことで『破壊を壊す』力を生じるのです。

 その心を失えば自ずと、
 守り神としての核も薄れゆく」


「他を傷つけず、自責に留まろうとする姿勢は良う御座りまするが
 その実、閉じこもることしかできますまい。
 家内を守るために見張るべきは内ではなく、外」


「人形や。
 神を恨みなされ。神を憎みなされ。

 さすればこそ、
 『あの神のようにはならない』と、
 『己こそは人を救うものになるのだ』と、
 傲慢な欲を抱き得るのですから!」


「……さて、もう『お月さま』とは
 呼んでくださらぬことでしょう。

 さようなら、我が唯一の眷属」


「ようやく御主を、
 『“この世で最も憎い神”のおらぬ世界』
 旅立たせてやれたこと」


「良う御座りましたね」







































「……………………」