RECORD

Eno.1461 篠崎 駿の記録

二泊三日の旅〈二日目〉『Memories』

俺たちは朝風呂を済ませて、宿の食堂で豪快な海鮮丼を平らげた。

「うまい!やっぱ北海道は飯が美味いな!」

陽介がご飯を頬張りながら叫ぶ。

雪ちゃんは味噌汁をすすりながら。

「ねえ、今日はどうする?札幌まで出る?それとも近場でのんびり?」

彰がスマホで天気予報を見ながら提案した。

「札幌は行きたいよね!特に時計台とか大通公園とか!」

雪ちゃんが目を輝かせて即答。

俺は少し迷ったけど、みんなのテンションに押されて。

「……まぁ、雪景色の中の札幌も悪くないか」

イドロがぱっと顔を上げて。

「札幌市内の観光地を効率的に回るルートを計算中……であります。時計台→大通公園→さっぽろテレビ塔→すすきの周辺が最適解であります」

陽介が拳を握って。

「よし!それじゃあ、今日は札幌観光と行くか!」

30分後。

宿の送迎で近くの駅まで出て、そこから電車で札幌へ。

雪がしんしんと降る車窓を眺めながら、俺たちはワクワクを抑えきれなかった。

札幌駅に着くと、まずは定番の「さっぽろ時計台」へ

雪が積もった赤レンガの建物が、まるで絵本の中みたいに佇んでる。

雪ちゃんが俺の腕に絡めて。

「わぁ、かわいい!写真撮ろ撮ろ!」

みんなで時計台をバックに並んで、タイマー撮影。

陽介が「もっと寄れよー!」と叫びながら飛び込んで、結局変なポーズばっかりになった。

次は大通公園。

広大な雪原に、雪像がいくつも並んでいて、ちょうど雪まつりの準備中みたいだった。

「すげー!これ本物の雪まつりじゃなくても十分すごいな!」

彰が珍しく興奮気味にスマホを構える。

イドロが雪像をじっと観察して。

「おぉ〜なかなか芸術的であります」

雪ちゃんが突然雪を掻き集めて。

「ここで雪だるま作っちゃおうよ!」

みんなで即座に賛成。

大通公園の端っこで、俺たちは子供みたいに雪を転がし始めた。

雪ちゃんが頭を担当して、ふわふわの丸を作る。

彰が「目と鼻はこれでいいよね」と小枝と石を拾ってきて。

陽介が「体は俺がデカくするぜ!」と力任せに巨大な雪玉を転がす。

イドロが完璧な円錐形の胴体を計算しながら成型。

俺は土台を固めて。

五人で協力して作った雪だるまは、ちょっと不格好だけど、帽子代わりに陽介のニットキャップを乗せて、めっちゃ可愛くなった。

「完成ー!」

写真を撮って、みんなでハイタッチ。

でも、陽介がニヤリと笑った瞬間──

「……なぁ、これ雪合戦の標的にしちゃう?」

「は?」

次の瞬間、陽介が雪玉を投げつけてきた。

直撃。俺の顔面にドスン。

「てめーっ!」

反射的に反撃した。

そこから大通公園は戦場と化した。

雪ちゃんが「えへへ、みんな攻撃ー!」と両手に雪玉を持って乱射。

彰が「ちょっと待って、私巻き込まないで……」と言っていると顔に雪玉が直撃した。

イドロは「……戦闘モード移行であります」と高速で雪玉を投げつけてきた。

「ほげぇー!!」

陽介が雪に当たるとなんとも言えない悲鳴をあげる。

俺は雪ちゃんを守りながら陽介を狙い撃ち。

雪玉が飛び交い、悲鳴と笑い声が公園に響く。

俺たちは服も髪も雪だらけになってへたり込んだ。

「はぁ……はぁ……負けた……」

雪ちゃんが息を切らしながら笑う。

「楽しすぎた……!」

彰が雪を払いながら、頬を赤くして。

「……私、こんなにはしゃぐの久しぶり」

イドロが雪まみれのまま。

「……“興奮”という感情、データ更新であります」

陽介が雪の上に寝転んで。

「来てよかったな」

さっきの雪だるまは、雪合戦の余波で少し崩れてたけど、それでも笑ってるみたいだった。

時計台と公園を回った後、さっぽろテレビ塔に登って雪の札幌市街を一望。

夕方近くになると、すすきのの方へ移動。

ネオンが雪に反射して、幻想的。

雪ちゃんが急に叫んだ。

「ねぇ!カラオケ行きたい!!」

「……今から?」

俺が苦笑いすると、陽介が即座に。

「行くに決まってんだろ! このテンションで帰れるかよ!」

すすきのにいいカラオケ店があるってことで、すぐ近くのチェーン店へ。

個室に5人でぎゅうぎゅう入って、ヒートアップ。

最初はみんなで昔見ていたアニメの歌を連発して大合唱。

そして、いよいよ本気モードへ。

マイクを握ったのは、もちろん雪ちゃん。

「じゃあ私の持ち歌~!聞いててね!」

選んだ曲は『ボクの記憶』。

イントロが流れた瞬間、部屋が静まり返った。

雪ちゃんの声は、いつもより少し震えていた。

『君がいない世界で 僕はまだ息をしてる』

歌詞が胸に刺さる。

俺たちは誰も合いの手を入れず、ただ聴いていた。

雪ちゃんの瞳に、昔の研究所の白い壁が映っている気がした。

『壊れた記憶の欠片 拾い集めてる』

最後のサビで、雪ちゃんは涙声になりながら、でも笑顔で歌いきった。

『君がくれたこの痛みさえ 宝物だから』

曲が終わると、しばらく誰も何も言えなかった。

「……雪ちゃん」

俺が小さく名前を呼ぶと、雪ちゃんは照れ臭そうに笑って、
「ちょっと古い曲だけど……私には特別なんだ」

次にマイクを取ったのは陽介。

「よし、俺が空気変えるぜ!」

選んだのは『LOVE&HEAT』

アップテンポなロックで、陽介らしい選曲。

サビで陽介がマイクを振り回しながら、俺たちを指差す。

「お前とLOVE&HEAT!」

そして突然、イドロが無表情で合いの手を入れる。

「LOVE&HEAT……であります!」

「……お前、それ合いの手じゃなくてただ言ってるだけだろ!」

陽介がツッコむと、みんな爆笑。

でもそれがきっかけで、部屋が一気に明るくなった。

続いて彰が恥ずかしそうにマイクを受け取る。

「……私、こういうの苦手だけど……」

選んだのは『LETS Your GO』

意外と激しいデジタルロック。

イントロで彰が目を閉じて深呼吸。

そして、歌い始めた瞬間、別人みたいだった。

「立ち止まると 消えてしまいそうな この瞬間」

普段は静かな彰が、全身で歌ってる。

「LETS Your Going!!」

サビで彰がマイクを握り潰す勢いで叫ぶと、イドロがまたしても。

「レッツ……ユア……ゴー……であります!」

完璧なロボットボイスで、まるでエコーかけてるみたい。

彰が吹き出しそうになりながらも、最後まで歌いきった。

「はぁ……はぁ……生きてるって感じ……」

汗だくの彰に、みんなで拍手。

そして最後に、俺がマイクを握った。

「……俺の番か」

選んだのは『続く夜』。

静かなバラード。

イントロのピアノが流れる。

俺は目を閉じて、ゆっくりと歌い始めた。

『君がいない夜は 星さえ見えなくて』

雪ちゃんが、そっと俺の手を握ってきた。

『でも朝は来るって 信じていたから』

陽介が缶ビールを置いて、彰がスマホを下ろして、イドロが正座したままじっと聴いてる。

『この夜が続くなら 君と二人でいい』

最後のフレーズ。

『君が笑うなら この夜は永遠でもいい』

歌い終わった瞬間、部屋が静かになった。

そして、イドロがぽつりと。

「おぉ〜なかなか上手であります」

その言葉を聞いた、みんなが同時に笑った。

イドロが、珍しく自分からマイクに手を伸ばした。

「……私も、歌いたい……であります」

「えっ!?マジで!?」

選んだのは……『風の夢』

ピッチもリズムも完璧。

「この気持ちを風に乗せて 届けたいこの思い!!」

そしてサビで、突然人間らしい感情が乗った。

「君の胸に響くように呼応する この私の想い止まらないから!」

最後、イドロがマイクを握りしめて、

「皆さん、ご清聴ありがとうであります!」

部屋が割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。

外はまだ雪が降り続いていた。

外は雪が降り続けてたけど、部屋の中は俺たちの歌声と笑いで、春みたいに温かかった。

カラオケを出て、雪のすすきの通りを歩きながら。

雪ちゃんが俺の手を握って。

「……今日、札幌来てよかったね」

「ああ。雪だるまも雪合戦もカラオケも、全部最高だった」

陽介が「次はもっとデカい雪像作ろうぜ!」

彰が「私は投げられる側じゃなく投げる側になる……」

イドロが「次回の雪合戦、戦略をアップデートであります」

俺たちは笑いながら、雪の夜の札幌を後にした。

帰りの電車の中で、雪ちゃんが俺の肩に頭を預けて、小さく呟いた。

「……明日も、こんな風にいられたらいいね」

俺は握った手を強く返して。

「ああ。ずっと、こうやって」

車窓の外、雪に覆われた札幌の灯りが、ゆっくりと遠ざっていく。

俺たちは、確かに、ここにいた。

五人で、ちゃんと、生きていた。