RECORD

Eno.1461 篠崎 駿の記録

New Beginning

飛行機が巡航高度に達し、シートベルトサインが消えた頃。

機内は薄暗く、ほとんどの乗客が眠りについていた。窓の外はもう真っ暗で、時折雲の隙間から街の灯りがちらりと見えるだけ。

雪ちゃんは俺の肩に頭を預けたまま、静かに息を立てている。さっき離陸の振動で少し目を覚ましたけど、すぐにまた眠りに落ちたみたいだ。

隣の席──通路を挟んで陽介が起きていた。

彰とイドロは後ろの列で、彰は本を読んでるのか窓側を向いて静か。イドロはスリープモードに入っている。

陽介がふと俺の方に体を寄せてきた。小声で。

「……よお、起きてるか?」

「ああ。雪ちゃん寝てるから、静かに」

陽介がニヤッと笑って、声をさらに落とす。

「この旅、ほんとに最高だったよな。スキーで転びまくった雪も可愛かったし、遊園地でジェットコースター乗った時の悲鳴、録音しとけばよかったぜ」

俺は苦笑い。

「お前が一番大声出してたろ。『うわあああ!!』って」

「うるせーよ!あれはスリル味わってんだよ」

陽介が少し照れくさそうに頭をかいて、窓の外を見る。

「……でもよ、俺さ。最初はこの旅行、ただの遊びだと思ってた。でも、みんなと過ごしてさ……なんか、家族みたいだなって思ったわ」

急に真面目なトーン。陽介らしい、照れ隠しの感じ。

俺は少し驚いて、陽介を見る。

「……お前がそんなこと言うなんて、珍しいな」

「バカ、たまには言うだろ。……お前らがいなかったら、俺、今頃どうなってたかわかんねえよ。雪も、彰も、イドロも……お前もな」

陽介の声が、少し震えてる気がした。機内のエンジン音がそれを隠してるけど。

俺は静かに頷く。

「ああ。俺もだ。みんながいなきゃ、俺は……あの時、生きてなかったかもな」

陽介が俺の肩を軽く叩く。

「次は海行こうぜ、BBQとかしてよ」

「そうだな。雪ちゃんが喜びそう」

そんなたわいのない話を続けて俺は言った。

「俺さ…そろそろ北摩に戻ろうと思うんだ…」

陽介が驚きこっちを見る

「マジで?」

「あぁ…そろそろ戻っても問題無さそうだし」

陽介は満足そうな顔をした後に小声で言った。

「なぁ…お前が戻ったあとも俺、お前ん家に居てもいいか?店の手伝いは多い方がいいだろ?」

俺は少し考えて言った。

「いいぜ、正直ワンオペ結構きつかったからな」

陽介が満足げに笑う。

「よっしゃ、それじゃ、そういう事で」

陽介はアイマスクをかけた。

「……おう。じゃあ、寝るわ。お前も雪とイチャイチャしとけよ」

「うるせーよ」

陽介は笑った後にアイマスクを下げた。

俺は雪ちゃんの手をそっと握り直す。温かい。

窓から見える夜空に、星が少し見えた。

この旅は終わったけど、陽介の言う通り──俺たちの絆は、これからも続く。

五人で、ちゃんと、前に進んでいく。

機内が静かに、夜の飛行を続けていた。