RECORD

Eno.340 月待 よすがの記録

無題

「……数日休んだら、どうせ冬休みだし」


授業は冬休みまでもう殆ど無いようなものだし、一般的には寒いと家を出たくなくなるものじゃないんだろうか。
単位は多分、まだもうすこし大丈夫だ、別に気にしたこともないけれど。
あんまり素行が悪くて父に連絡が行くのは避けたい。心配をかけてしまうだろうから……――

「……心配?」


まだ心配をかけてもらう気でいたのか。いくらも自立していないのだと喉の奥が不快になる気がした。

――よすがは、母さんのようにはならないでくれ。

要するに、父は男にだらしのない母を反面教師にしろとよすがに願ったのだ。
媚びた声で甘えれば手を貸してもらえることのないよう、着飾るなと謂った。
己に尽くした報酬を払えぬよう、女らしい取柄を嫌った。

人のよすがになれますようにと付けられた名は、愛されるべき寄る辺を識らない方が良いのだと教わった。
せめて親の願いを叶えることが生きる意味だと思っていたのに

「…………ひとつも、できてないなあ……」


平等に人に甘えて頼らねば、どうやら普通に生活が出来ないらしい。
己に特徴を付けて振る舞って、ようやく認識できるらしい。
そうして生きることが実利であるなら、自分は酷く人間が好きだったのだろう。

けれど今 起きて、顔を洗って、着替えて、一日を始める理由が見つからないでいる。やることは沢山あった気がする。

"檻"の図案を完成させなきゃ。
クリスマスプレゼント、渡すって言ったのに。
秘密基地に取りに行く資料、いくつあるんだっけ。
"紐"の話、まだしてないや。
誘うって話、決めておかないと。
素材集めも手伝ってくれるって言ってもらってたのに。


やるべきことを整理すれば、そのタスクの量は本来楽しい予定のはずなのに。

「……これが無くならないと、死ねないのか」





デバイスを操作してカレンダーを見る。
冬休みの日数を数えて幾らでも起きなくて良い日に安堵する。
あと数日なにもしなければくるしくないのだ。



おやすみなさい。