RECORD

Eno.2888 朝比奈 怜奈の記録

ちょっといい事

この土地に来てから、気づけばひと月が過ぎようとしている。
時間は静かに、けれど確かに、私の足跡をここに刻み始めている。
私は、遠い場所から――
何かに追われるように、あるいは飛び出すように、ここへ来た。
本当の私を知る人は、ほとんどいない。
友人と呼べる人すら、以前の私は持っていなかった。
それなのに。
突然現れた私を、2年1組のみんなは自然に受け入れてくれた。
いくつかの催しに誘ってくれて、
輪の中へ、ためらいなく混ぜてくれた。
こんなことは、かつての生活にはなかった。
――友人同士で笑うというのは、
こんなにも胸が温かく、軽やかなものなのですね。
いつか、打ち明ける日は来るのだろうか。
隠し事は得意なはずなのに、
心の奥では、微かな罪の意識が消えずにいる。
この素敵な友人たちを、
知らぬ間に騙してしまっているのではないか。
そんな考えが、夜になると顔を出す。
それでも私は願ってしまう。
私自身が過去を気にせず、忘れてしまえるような
楽しい思い出で、
少しずつ、上から塗り替えていけたらいいと。
今は、ただそう思っている。
今日は放課後、
初めて男の子と二人きりで出かけた。
仕事の話をする、慕っている方はいるけれど、
年頃の話を、同じ目線でするのは初めてで――
正直、とても緊張した。
けれど、不思議と。
少しだけ、似たものを感じて。
だからだろうか、
心の扉が、思っていたよりも簡単に、きい、と音を立てて開いた。
今日という一日も、
私の中に、静かに積み重なっていく。

楽しい一日でした。ありがとうございます。