RECORD

Eno.232 月影誠の記録

12/23

何歳までサンタを信じていたか? とはよく子供たちの間でも議題になる。
俺もよく耳にしたし、ついこの間の1年生との交流会のときにも話題に上がった。
そのくらい、定番といえば定番の質問だ。

「―― 何歳まで信じてたっけな」



それが、親だと気が付いたのはいつだったっけ。





小学生に上がる前も、信じていた記憶はない。
クソガキではあったけれど、人が言うサンタ像とは違うと感じた。

母親
「やったやん誠、ノートにワーク、勉強セットがたくさんや」


母親
「サンタさんも、あんたが賢い子になるように願っとるで」



「俺別にこんなんいらんねんけど……」


父親
「はぁ? 何言うとんねん、お前も俺の子供なんやから真みたいになれるわ」


父親
「ええか? この世界は地位や。学力がないとええ地位にはつけへん。
 甘えは許さん。俺らに泥を塗るんとちゃうぞ」


父親
頭の悪いやつに存在する価値はない。分かったな?」



「…………はい」




このころからこう学んでいた。
サンタ、というのは子に理想を押し付けるために親が利用するものだと。
存在の真偽などどうだっていい。ただ、親は子にいい子になってほしいから、あるいは賢くなってほしいから。
だから、その存在を親は利用するのだと。


……多分、『最初から』そう理解していたのだろう。
それこそ、生まれてサンタという単語を理解したそのときから。



小学校に入ってからは、クリスマスに特別何かあったわけではなかった。
兄はプレゼントがもらえて、俺にはなかった。
兄は可愛がられて、成績が良くて、両親も大切にしていた。
クリスマスには悪い子にはプレゼントはないらしいから、仕方のないこと。
……それだけのことだ。


「両親に可愛がられる兄貴を見ながら静かにこの日を過ごす。
 俺にとって、クリスマスはそういう日だった」


「別にそれ自体、特に思うことはなかったんだよ。
 俺は出来の悪い子で、兄は賢いよくできる子。親は何も間違っていない」


「……ただ。皆が幸せそうにしている。親に愛されてる。
 何を貰っただとか自慢して、幸せそうにしていて」


「クリスマスに何を貰うかだとか、そういう話も聞こえてきて。
 事情を知った辺りからは、同級生の皆は俺の前でそういう話をしなくなった」


「……こっそりと、俺に気遣って、俺に隠れてそういう話をするようになった」



「そこで、俺は思うんだ」




「あぁ、俺は一人切り取られた空間に居るんだなって」


「皆と一緒にはなれないんだって」



「……だからいい思い出がないんだよ」



「…………思いたくもないのにな」


「俺が辛いから、こんな日なくなってしまえだなんて」




あと1日。
どうか、化けの皮が剥がされませんように。