RECORD

Eno.220 笹杜 梨咲の記録

16歳

「お誕生日おめでとう、梨咲!
 どう? 16歳になった感想は?」

私の好きな料理ばかりが並ぶ食卓を挟んで
ひとり拍手をする母が、こちらに向けて小首をかしげて見せた。

「ありがとう。…どう、って言われても……。
 まだあんまり実感はないかも……」


「そっかぁ、そうだよね~。
 お酒が飲めたり車の運転が出来るわけじゃないもんね。
 あっ、でもバイクの免許は取れるんじゃない?」

「うーん…」

「なーに? あんまり興味ない?」

「ん……」


曖昧に頷いておく。
移動手段があるのは便利だけど…自転車と違って維持費がかかる。
今は寮暮らしだし、毎日使うわけじゃないものに出費は出来ない。


「欲のない子ねえ、プレゼントも欲しがらないし…。
 お母さんなんて若い頃は何でもやってみたかったけど。
 お誕生日なんだから、せめて好きなものでも食べなさい。
 ほら、冷めないうちに」
「うん、いただきます」

ぶりの照り焼き、ミネストローネにごはん。それからケーキ。
和洋伊?折衷、ごちゃまぜの献立。ぜんぶ私が好きなものばかり。
誕生日が年末で良かった。
これが学校のテスト中だったら、きっと家には帰らなかっただろうから。
子供の頃はクリスマスやお正月に挟まれてうやむやになりがちな
誕生日が好きじゃなかったけれど、今は良かったと思える。
……これも成長、と言えるのかな。



「お母さん、ミネストローネにタバスコかけちゃお~。
 ちょっとピリっとくるくらいが美味しいんだよね。
 梨咲もいる? ……いらないか、辛いのそんなに好きじゃないもんね」

「うん」



早く大人になりたい。