RECORD
Eno.1461 篠崎 駿の記録
Affection
ここに来てから幾分か経ちみんな少しずつ新しい生活に慣れてきた頃。
俺は二階の自分の部屋でコーヒーを淹れながら、ふと四階の方から聞こえる「クェー! クェー!」という元気な声を耳にした。
クエちゃんが、いつもの朝の挨拶している。
「……相変わらず元気だな」
苦笑いしながらカップを手に階段を上る。
四階に着くと、すでに陽介がクエちゃんの大きな水槽の前でしゃがみ込んでいた。
「おはよ、駿!見てみろよ、こいつ今日も絶好調だぜ」
クエちゃんは水槽の中をぐんぐん泳ぎ回り、陽介の顔を見上げてぷくぷくと泡を吐いている。
「今日、天気いいし雪も止んでるからさ……クエの散歩、行こうぜ」
陽介がニヤリと笑って俺を見た。
「散歩?」
「そうだよ。屋上だけじゃ狭いだろ?たまには外の空気吸わせてやろうって、イドロも言ってたし」
確かに、クエちゃんはここに来てから屋上で日光浴したり、雪の中で転がったりするのが大好きになっていた。
でも、外に出すのは初めてだ。
「……まあ、いいか。俺も付き合うよ」
俺がそう言うと、陽介がガッツポーズをした。
「よっしゃ!じゃあ準備だ準備!」
結局、クエちゃんの散歩は家族総出の大イベントになった。
午前中の静かな住宅街。
雪が積もった道を、俺たちはゆっくりと進んだ。
クエちゃんはキョロキョロと外の景色を眺めている。
時々「クェ!」と嬉しそうに鳴く
「ほら、見ろよ。あの公園まで行こうぜ。雪少ないとこ選んだから大丈夫だろ」
陽介が先導して、近所の小さな公園へ。
ベンチの周りは除雪されていて、地面が少し見えている。
クエちゃんは最初はちょっとびっくりしたみたいで、ぴたっと動かなくなった。
でも、すぐに雪の感触を確かめるように、ゆっくりと這い始めた。
「クェー……」
小さな声で鳴きながら、白い雪の上をずるずると進む。
雪ちゃんがしゃがみ込んで、優しく背中を撫でる。
「気持ちいい?クエちゃん」
クエちゃんは満足げに目を細めて、羽を広げる
彰はベンチに座って、穏やかな顔で眺めている。
イドロが微笑みながら言った。
「クエさん、幸せそうでありますね。駿様、陽介様、ありがとうございます」
陽介が照れ臭そうに頭をかく。
「お、おう……まあ、家族だろ」
俺は少し離れたところで、みんなを見ていた。
クエちゃんが雪の上を這い回り、時々転がって遊ぶ。
雪ちゃんが追いかけて笑い、陽介が「危ねえぞ!」と慌てて見守る。
彰が静かに写真を撮り、イドロがそっとクエちゃんのロープを調整する。
白い息が上がる寒い朝なのに、胸の奥がじんわり温かくなった。
「……クエちゃん」
俺が小さく名前を呼ぶと、クエちゃんがこっちを振り返った。
ぷにっとした顔で、ゆっくりと俺の方に這ってくる。
そして、俺の足元にたどり着くと、いつものように顔をすりすりしてきた。
冷たいのに、優しい感触。
俺はしゃがみ込んで、クエちゃんの頭をそっと撫でた。
「お前も、ここが好きになったか」
クエちゃんは「クェ」と小さく答えて、俺の手をくちばしで軽く噛んだ。痛くない、甘噛み。
陽介が遠くから声をかける。
「おい駿!ぼーっとしてねーでこっち来いよ! クエが雪だるま作れってよ!」
雪ちゃんが笑いながら手を振る。
「駿くん、一緒にクエちゃんの雪像作ろ!」
俺は立ち上がって、苦笑いしながらみんなの方へ歩いた。
クエちゃんも、俺の後ろをのそのそとついてくる。
この小さな公園で、俺たちはしばらく遊んだ。
クエちゃんが雪に埋もれて慌てたり、陽介が転んで大騒ぎしたり。
雪ちゃんの笑い声が響いて、彰が「うるさい」と言いながらも口元が緩んでいる。
イドロが「美しい冬の思い出であります」と満足げに言った。
帰り道、クエちゃんは疲れたのかうとうとしていた。
俺はクエちゃんを抱っこしながら、家に向かう。
「……なあ、駿」
陽介がぽつりと呟いた。
「何だよ」
「クエの散歩、定期的にやろうぜ。こいつ、すげえ喜んでたろ」
俺は少し黙ってから、頷いた。
「ああ…そうだな」
家に着く頃には、クエちゃんは完全に眠っていた。
四階の部屋に戻して、毛布にそっと移す。
みんながそれぞれの階に戻っていく中、俺は少しだけ四階に残った。
窓の外には、また雪がちらつき始めていた。
クエちゃんの寝息が、静かに聞こえる。
「……おかえり、クエちゃん」
俺は小さく呟いて、そっと頭を撫でた。
これからも、こんな日が続く。
家族みんなで、クエちゃんの散歩に行ったり。
騒がしくて、くだらなくて、でも確実に温かい日々が。
この家で、俺たちは少しずつ、ちゃんと根を張っていくんだろうな。
俺は二階の自分の部屋でコーヒーを淹れながら、ふと四階の方から聞こえる「クェー! クェー!」という元気な声を耳にした。
クエちゃんが、いつもの朝の挨拶している。
「……相変わらず元気だな」
苦笑いしながらカップを手に階段を上る。
四階に着くと、すでに陽介がクエちゃんの大きな水槽の前でしゃがみ込んでいた。
「おはよ、駿!見てみろよ、こいつ今日も絶好調だぜ」
クエちゃんは水槽の中をぐんぐん泳ぎ回り、陽介の顔を見上げてぷくぷくと泡を吐いている。
「今日、天気いいし雪も止んでるからさ……クエの散歩、行こうぜ」
陽介がニヤリと笑って俺を見た。
「散歩?」
「そうだよ。屋上だけじゃ狭いだろ?たまには外の空気吸わせてやろうって、イドロも言ってたし」
確かに、クエちゃんはここに来てから屋上で日光浴したり、雪の中で転がったりするのが大好きになっていた。
でも、外に出すのは初めてだ。
「……まあ、いいか。俺も付き合うよ」
俺がそう言うと、陽介がガッツポーズをした。
「よっしゃ!じゃあ準備だ準備!」
結局、クエちゃんの散歩は家族総出の大イベントになった。
午前中の静かな住宅街。
雪が積もった道を、俺たちはゆっくりと進んだ。
クエちゃんはキョロキョロと外の景色を眺めている。
時々「クェ!」と嬉しそうに鳴く
「ほら、見ろよ。あの公園まで行こうぜ。雪少ないとこ選んだから大丈夫だろ」
陽介が先導して、近所の小さな公園へ。
ベンチの周りは除雪されていて、地面が少し見えている。
クエちゃんは最初はちょっとびっくりしたみたいで、ぴたっと動かなくなった。
でも、すぐに雪の感触を確かめるように、ゆっくりと這い始めた。
「クェー……」
小さな声で鳴きながら、白い雪の上をずるずると進む。
雪ちゃんがしゃがみ込んで、優しく背中を撫でる。
「気持ちいい?クエちゃん」
クエちゃんは満足げに目を細めて、羽を広げる
彰はベンチに座って、穏やかな顔で眺めている。
イドロが微笑みながら言った。
「クエさん、幸せそうでありますね。駿様、陽介様、ありがとうございます」
陽介が照れ臭そうに頭をかく。
「お、おう……まあ、家族だろ」
俺は少し離れたところで、みんなを見ていた。
クエちゃんが雪の上を這い回り、時々転がって遊ぶ。
雪ちゃんが追いかけて笑い、陽介が「危ねえぞ!」と慌てて見守る。
彰が静かに写真を撮り、イドロがそっとクエちゃんのロープを調整する。
白い息が上がる寒い朝なのに、胸の奥がじんわり温かくなった。
「……クエちゃん」
俺が小さく名前を呼ぶと、クエちゃんがこっちを振り返った。
ぷにっとした顔で、ゆっくりと俺の方に這ってくる。
そして、俺の足元にたどり着くと、いつものように顔をすりすりしてきた。
冷たいのに、優しい感触。
俺はしゃがみ込んで、クエちゃんの頭をそっと撫でた。
「お前も、ここが好きになったか」
クエちゃんは「クェ」と小さく答えて、俺の手をくちばしで軽く噛んだ。痛くない、甘噛み。
陽介が遠くから声をかける。
「おい駿!ぼーっとしてねーでこっち来いよ! クエが雪だるま作れってよ!」
雪ちゃんが笑いながら手を振る。
「駿くん、一緒にクエちゃんの雪像作ろ!」
俺は立ち上がって、苦笑いしながらみんなの方へ歩いた。
クエちゃんも、俺の後ろをのそのそとついてくる。
この小さな公園で、俺たちはしばらく遊んだ。
クエちゃんが雪に埋もれて慌てたり、陽介が転んで大騒ぎしたり。
雪ちゃんの笑い声が響いて、彰が「うるさい」と言いながらも口元が緩んでいる。
イドロが「美しい冬の思い出であります」と満足げに言った。
帰り道、クエちゃんは疲れたのかうとうとしていた。
俺はクエちゃんを抱っこしながら、家に向かう。
「……なあ、駿」
陽介がぽつりと呟いた。
「何だよ」
「クエの散歩、定期的にやろうぜ。こいつ、すげえ喜んでたろ」
俺は少し黙ってから、頷いた。
「ああ…そうだな」
家に着く頃には、クエちゃんは完全に眠っていた。
四階の部屋に戻して、毛布にそっと移す。
みんながそれぞれの階に戻っていく中、俺は少しだけ四階に残った。
窓の外には、また雪がちらつき始めていた。
クエちゃんの寝息が、静かに聞こえる。
「……おかえり、クエちゃん」
俺は小さく呟いて、そっと頭を撫でた。
これからも、こんな日が続く。
家族みんなで、クエちゃんの散歩に行ったり。
騒がしくて、くだらなくて、でも確実に温かい日々が。
この家で、俺たちは少しずつ、ちゃんと根を張っていくんだろうな。