RECORD
Eno.2914 日柳 響の記録
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俺が裏世界に迷い込んだ日
紫紺の空。燃ゆる夕陽。伸びる人影。
見たこともない標識。不自然に滲んだ看板。
家の成り損ないばかりが並ぶ、ニセモノの住宅街。
見覚えのある街並みも、なんでもない日常も、そこにはただのひとつも無い。
あったのは、出来の悪い街のハリボテたち。
その街の中を、俺は走っていた。
「くっそ…何処だよ、ここッ!」
戸惑う俺のことなどお構いなしに、背後から影が迫る。
どうしてこうなった?いつの間にこんな場所に迷い込んだ?
何も分からない、分かることはただ一つ。
本能が告げている、今迫ってきているあれはヤバイと。
…俺が初めて怪獣を見たのは、ガキの頃。
5歳ぐらい頃だっただろうか。
その姿に見惚れたもんだった。
あ、勿論映画の話だ
父親に連れて行ってもらった映画、そう、怪獣はフィクションの存在だ
…だと思ってたんだが。
何かが、俺と影の間に飛び込んでくる
──そいつは
俺の持っていたノートパソコンから飛び出してきたような気がした。
そう、俺はまた目撃したんだ。

悪かったな、こっちも必死だったんだよ




