RECORD

Eno.1461 篠崎 駿の記録

Brand New Days

北摩市の冬は、クリスマスが過ぎてもまだ雪を降らせ続けていた。

12月31日の夕方、喫茶店のカウンターで俺はいつものようにコーヒーを淹れていた。

一階の店内は閉店間近で、雪ちゃんがテーブルを拭き、陽介が大声で何か叫んでいる。

「おーい駿!もう大晦日だぜ!今年も終わりかよ、早いなあ」

陽介が階段を降りてきて、俺の隣にどっかり座った。

「そうだな……」

俺がぼそっと答えると、雪ちゃんが笑顔で近づいてきた。

「みんなで年越ししようよ!お鍋とかして、初詣も行っちゃおう!」

彰が本を読みながら静かに言った。

「……いいね。クエちゃんに巫女さんの服着せて、鈴持たせたら可愛いかも」

クエちゃんが「クェー!」と鳴いて、まるで同意しているみたいだった。

イドロがキッチンから顔を出して、穏やかに微笑んだ。

「それでは、私がおせちの準備をいたします。お雑煮も、駿様のお好みの味に仕上げますよ」

みんなの顔がぱっと明るくなった。

陽介が俺の肩を叩く。

「よし!じゃあ今日は早めに閉めて、飾り付けだ!門松とか、鏡餅とか置いてさ。正月気分盛り上げようぜ!」

雪ちゃんが目を輝かせて。

「私、しめ飾り作ってみる!彰も手伝って!」

俺はみんなを見て、頷いた。

「……ああ、いいな」

その夜、店は大忙しだった。

陽介が張り切りすぎて、鏡餅を高く積み上げようとして崩したり、彰がクエちゃんに小さな鈴をつけて遊んだり、イドロが丁寧におせちの煮物を仕込んだり。

雪ちゃんは俺と一緒に、店先に小さな門松を置いた。

雪がちらちら降る中、二人はコートを着て外に出た。

「……今年も、みんなと一緒にいられてよかった」

雪ちゃんが小さく呟いた。

俺は彼女の手をそっと握る。

「ああ……来年も、ずっとこうだといいな」

雪ちゃんが頰を赤くして、笑った。

「うん……駿君と、みんなと」

店に戻ると、温かい光と笑い声が待っていた。

カウンターにはイドロの手作りおせちの試食が並び、クエちゃんが鏡餅の前で得意げに座っている。

みんなでテーブルを囲んで、年越し気分を味わった。

イドロが汁物をよそってくれる。

「それでは、皆さんで良いお年を、であります」

グラスを合わせる音が響く。

俺はみんなの顔を見回した。

雪ちゃんの手をそっと握りながら。

この家に、みんながいて。

そして、俺たちはお鍋を囲んで笑い合い、赤白を見ながらカウントダウンした。

窓の外では雪が静かに降り、街は初詣の準備で少し賑やかになっていた。

「あと10秒!」

陽介が叫ぶ。

みんなで声を合わせる。

「10、9、8……」

クエちゃんが「クェー!」と鳴く。

「ハッピーニューイヤー!」

新年が来た。

みんなで抱き合ったり、ハイタッチしたり。

雪ちゃんが俺にそっとキスをして、囁いた。

「おめでとう、駿君」

俺も返した。

「おめでとう、雪ちゃん」

その後、みんなでコートを着て、近くの神社へ初詣に出かけた。

雪の積もった道を、懐中電灯を持って歩く。

神社に着くと、鈴を鳴らし、お賽銭を入れて手を合わせた。

俺は、心の中で願った。

みんなが健康で、幸せで、ずっと一緒にいられますように。

雪ちゃんの願いは、きっと同じだった。

帰り道、陽介が大声で。

「今年もよろしくなー!」

彰が笑って。

「僕も、みんなと一緒にいたい」

イドロが優しく。

「皆様、どうぞ良い一年を」

家に戻って、温かいお雑煮を食べながら、初日の出を待った。

窓から見える空が、少しずつ明るくなっていく。

この家に、みんながいて。

かけがえのない仲間たちと迎える新年。

温かくて、賑やかで、雪のように優しい──

ずっと忘れない、かけがえのない一年の始まりになった。