RECORD

Eno.1461 篠崎 駿の記録

新たな家族

北摩市の冬の夕暮れは、雪が静かに降り積もる。

僕はいつもの散歩道を歩いていた。ハーちゃんのエサを買った帰り道、路地裏で小さな鳴き声が聞こえた。

「クゥン……ワン……」

覗いてみると、段ボールの陰に縮こまる一匹の子犬。

真っ白な毛が雪のように白く美しさすら感じるがそんな美しい体毛は泥と雪で汚れ、寒さで震えていた。

首輪はなく、明らかに捨てられたと見てもいいだろう。

ため息をつき、しゃがみ込む。

「……どうしたんだ、お前」

子犬は怯えながらも、僕の指先に鼻を寄せ、弱々しく舐めた。

その姿に僕の心は突き動かされた。

「しょうがない…ここに居ても寒いだろ」

コートの内側にそっと包み込み、家に向かった。

家に着くと、玄関のドアを開けた瞬間、いつもの賑やかさが待っていた。

陽介がキッチンから顔を出す。

「お、彰、遅いじゃん……って、なんだその匂い? 犬?」

僕は無言でコートを開き、白い子犬を取り出す。

その姿を見た瞬間、みんなが凍りついた。

雪ちゃんが息を飲む。

「白い子犬?白柴かな」

駿がカウンターからゆっくりと歩み寄り、子犬を見つめる。

「でもさ、餌とかケージとかどうする?」

僕は子犬を撫でながら、言った。

「なぁに、稼ぎなら結構あるからね。心配は要らないよ」

そして、子犬を地面にそっと置き、みんなを見回した。

「……名前どうしようか?」

雪ちゃんがぱっと手を挙げた。

「せっかくだから、みんなで決める! 公平に!」

陽介がニヤリと笑う。

「いいね! 紙にそれぞれ名前書いて、地面に置く。でこの子が最初に前足置いた紙の名前にするってのはどうだ?」

イドロが微笑む。

「面白い方法ですね。運命に任せる、という感じで」

みんながそれぞれ紙とペンを取り、名前を書く。

雪→ 「雪丸」

陽介 → 「白虎」

イドロ → 「月」

駿 → 「銀」

彰 → 「虎太郎」

紙を五枚、床に円形に置く。

子犬はすっかり温まり、みんなに囲まれて少し元気になっていた。

好奇心旺盛に、くんくん嗅ぎながら紙の周りを歩く。

みんなが息を潜めて見守る。

子犬が一枚の紙の前で止まり──

小さな前足を、そっと置いた。

そして、みんなで紙をひっくり返した。

「虎太郎」

僕の書いた…名前だ…

陽介が大笑い。

「ははっ! 彰の勝ちかよ! しかも虎太郎って、渋いな!」

雪が拍手しながら。、

「そうだね〜虎太郎だから…愛称はコロちゃんだね!」

イドロが優しく笑う。

「コロさん。よろしくお願いしますね」

駿が小さく微笑み、子犬の頭を撫でる。

「……虎太郎、か。悪くない名前なんじゃないの?」

僕は少し照れくさくなり、視線を逸らしながらも、虎太郎を抱き上げる。

虎太郎は僕の胸に顔をすり寄せ、小さく「クゥン」と甘えた声を上げた。

その夜から、北摩市の家に新しい住人が加わった。