RECORD

Eno.2939 尾多 久太郎の記録

御尾神社へようこそ

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神秘に触れた。

それだけで生活は一変するものだなと思う。
やっと慣れた中学から転校するのは些か拒絶したい気持ちもあったが……北摩市。
そういった変わり者が多いのなら、彼の夢も叶えやすいのだろう。

「勿論、行くでござるよ!」

これは中学二年生になろうとする、尾田 久太郎おだ ひさたろうという少年の話。

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「おい!くそチビ!
 この神社は遊び場じゃない、帰れ」

その日。
御尾神社みおじんじゃを掃除していた俺はどこぞから紛れたチビが藻だらけの池に潜っているのを見かけた。
先祖代々受け継いできた神社だが山奥にあるこんな場所まで来て手を合わせるような人間も既におらず
管理を任された子孫は信心など疾うに失くし神主である事も放棄している為か
この場所はもう寂れに寂れている場所になり果てていた。

なのでまぁ……ここはずっと俺だけの場所だったのだが。

「いやでござる!!拙者!強くなりたいでござるよ!!」

く、くそガキが……!
チビの反論にこめかみがぴくぴくと反応する。

うっせー!!早く出ろ!!何かあったら俺の責任になるだろうが!!」

『うわぁぁぁあ嫌でござる!いやでござるよ!!!人殺しぃぃ!!

「人聞き悪い!?
 ちょっと?!お兄さんのいう事聞いて池から上がろうねぇぇぇぇ!!」

『ぬおおお!!!!喰らうでござるよ水鉄砲の術!!』

クソガキと冬空の下、きっったねぇ池で格闘して数時間。
流石に根負けしたのかその出っ歯のクソガキは俺に抱えられてなんとか焚火で温められていた。
一度捕まえてしまえばガキは大人しく、どこか寂しそうな目で黙って火を見つめている。
手を離すと逃げるかと思ったがこの様子ならまぁ大丈夫だろう。

「お前なんでこんな所に居るの?どっからきた?
 風邪引いたらおとーさんとおかーさんが心配するだろ?」

質問攻めにしてもそいつは答えない。
よくみりゃ服はボロボロ、時代錯誤な着物姿?ときてる。
コイツはちょーっとまともじゃない感じがする。
正直、追い返して無関係でいたいが……子供なんだよな。

「名前は?」

『知らんでござるよ。プイス』

「クソ出っ歯が……燃やすぞこのまま」

『酷い冒涜でござる?!
 仕方ない、拙者の事はイケメン忍者マンと呼ぶでござるよ』

「OK、出っ歯マン!
 ……って、もしかしてあれお前忍者修行のつもりか?」

『他に何をしているように見えたでござるか?
 拙者!父上の期待に応える為強くなるでござるよ!』

「うーん、わかった!保護者の電話番号教えてくれ!」

『知らんでござるよ!
 お主こそこんな場所で何をしていたでござる?』

「掃除だよ!!!てめぇのせいで全然すすんでねぇ!!!!」

『ほほう……偉い!不審者な事を除けば見上げた心意気でござるよ~』

「ほぁぁぁぁぁ?!もう許さねぇぞこのクソ出っ歯ぁぁぁ!!!」


こうして、クソ出っ歯と俺は出会った。
まさかそれがこの先長い付き合いになるとは思わないじゃないか。ねぇ?


【続く】