RECORD

Eno.3045 杠 仁羽の記録

細工は流々、

――姉が、私の耳に、優しくピアスを通す。
夕焼けと夜空を内包した、彼女の瞳の様な石。

『――元気で。離れても、どこにいても、貴女は私の大事な――』

慈しむような声、表情
…ねえ待って。私はまだ、

『待って、お姉ちゃ――』


――パチン、と弾くような音で意識が浮上する。

(……寝てた?流石に根詰めすぎたかな)
顔を上げると、窓から見える空がうっすら夜の気配を纏いだしていて。
「空は、あっち・・・と変わらないように見えるから不思議だよねえ」
耳元で黄昏色のピアスが夕日を反射して光る。

「…みんな、元気かな」
と呟いて、はっ、と沈む気持ちを吹き飛ばすかのように両頬を軽く叩く。

「とりあえず!これでこっちの世界で使う術式は一通り完成したかな。
 いやー…異世界だからって、まさか術式をこっち用に構築し直す事になるとはね…」

手のひらサイズのぬいぐるみに小さな石を埋め込むと、それはそれが当然のように・・・・・・立ち上がる。
「うん、問題なさそう!土や石から整えてもいいけど、緊急じゃなければぬいぐるみこういうものに”種”を植えておくのが一番早いや」

「…ロボットとやらが手に入れば、金属だし耐久性も申し分ないんだけど…まだちょっと手が届かないからね」

そう、だからこそ多摩高専を志望したのだ。手に入れられないなら、自分で作ればいいのだから。
構造も理解できて、術式も馴染ませやすくなるだろう。見た目の誤魔化しも効く。私としては一石二鳥なのだ。


「さて、準備に手間取った分、受け入れてくれたお方々に協力していかないとね!
 裏世界でキミたちの試運転と…北摩ここの地理を覚える為にも色々散策しようか。
 篭って作業してたからなあ、買い物とか、ああ一般教養とかも今のうちに詳しく――」


――時間は戻らない。
故郷に帰ることはできない。帰ってはいけない。
大切な人たちの思いを無駄にしないように。
ならばこの地で前を向いて生きよう。
笑って、泣いて、後悔しながら。

そしてずっとずっとその先で、姉に再会できたなら。
「すごく楽しかった!」と、笑って言えるように。