RECORD

Eno.2018 東谷 桃弥の記録

追想③

8歳離れた兄貴がいる。
頭も良くて、気立ても良くて、なんでもできる出来た人間だった。

そんな兄貴と違って出来の悪い俺を、両親はよく気に掛けてくれてたと思う。
馬鹿な子ほど可愛いってやつなんだろう。

でも、兄貴にとってそれは、納得のいくものじゃなかった。
できるからって放ったらかしにされて、出した結果も当然だと言われて褒められることもなく。

一方で俺は、小学校ではかけっこで1着になっただけで大袈裟な程に褒められた。
好きなものを買ってもらえた。
その日の夕食は好物ばかりだった。

でも、

兄貴の視線と両親の猫撫で声の間で、愛想笑いだけを浮かべてた記憶を鮮明に覚えてる。




兄貴の大学受験の時も、両親は俺に夢中だった。
どうせ受かると信じてやまなかったから、それよりも、俺の成績を伸ばす方に必死で。
出来の悪い俺は、塾に行っても家庭教師を雇ってもなかなか伸びなくて。
それでも、少しでもテストが良ければパーティだった。




兄貴は当然のように合格した。
誰もが知ってる有名大学だ。

受かったら家を出るって言ってたから、その前にちゃんと話がしたかった。


おめでとう、って声を掛けた。
そのあと、尊敬してるって伝えたかった。







『話しかけるなよ。馬鹿が移る』










中学に進学してすぐ

俺は不登校になった。





両親には強く反発するようになって、毎日のように喧嘩をしてた。


家を飛び出したらあてもなく彷徨って、
雨の日は公園の遊具の中で寝たりした。


そのうち不良グループとつるんで、家にもほとんど帰らなくなった。





そんな不良グループにも、今となっては捨てられて。






俺に何の価値があるっていうんだ。
そんな思考が、ずっと付き纏ってた。