RECORD

Eno.1461 篠崎 駿の記録

Promise of Love

あれから数週間。

リハビリは少しずつだけど、確実に前に進んでいた。

今日は、2月14日。
朝から雪ちゃんの様子がおかしい。

いつもより早く来て、俺の顔をじーっと見ては目を逸らし、頰を赤くして「今日はいいものがあるから楽しみにしてて!!」とだけ言って、そそくさと出て行った。

「……何だろ」

俺はドキドキしながら待った。

彼女が何か隠してるの、なんとなくわかってる。

でも、期待しすぎると恥ずかしいから、わざとスマホをいじって平静を装っていた。

夕方、紙袋を胸にぎゅっと抱えた雪ちゃんが部屋の前に立っていた。

メガネが少しずれていて、耳まで真っ赤になっている。

目が合うと、ぱっと視線を逸らして小さな声で、

「……入っていい?」

「もちろん……顔、赤いけど大丈夫?」

「だ、大丈夫だよ!!」

彼女は慌てて俺の部屋に入ってきて、ソファにちょこんと座った。

紙袋を膝の上に置いて、指でリボンをいじいじしながら、

「……これ」

小さな包みを差し出してきた。
赤と白のストライプの包装紙に、大きめのハート型リボン。

手作り感が溢れていて、俺の心臓が一気に跳ね上がった。

「俺に……?」

「うん…」

俺が包みを開けると、中には可愛らしいチョコレートがぎっしり。

ハート型、音符型、星型……どれもちょっと形が歪んでるけど、それが逆に愛おしい。

一番上に乗ってるのは、ホワイトチョコで「LOVE YOU」と書いてある小さなプレート。

「……これ、雪ちゃんが?」

「うん……初めてちゃんと作ったから、失敗してるのもあるけど……」

彼女は俯いて、指をぎゅーっと握りしめてる。
俺はもう我慢できなくて、

「可愛い。全部可愛い。ありがとう」って、思わず本音が溢れた。

雪ちゃんがびくっと顔を上げて、目を潤ませながら、

「ほ、本当に……? 味、変じゃなかったらいいけど……」

「食べてみる」

俺は一番上のチョコをそっと取って、口に入れた。

甘くて、少しビターですごく美味しかった。

「……美味しい。世界一美味しい」

俺が言うと、彼女はほっと息をついた。

「よかった……っ」

彼女は恥ずかしそうに笑う。

「私、駿君に喜んでもらえて嬉しいや」

俺の胸が、ぎゅうって締め付けられるみたいに熱くなった。

「俺も……雪ちゃんのこと、好きだよ」

言葉に出すと、顔が熱い。でも、もう隠したくなかった。

「暗いのが怖いのも、まだ完全に治ってないけど……雪ちゃんがいてくれるだけで、俺、頑張れるんだ。だから…その…」

恥ずかしさで言葉が詰まるけど彼女への想いを込めて口に出した。

「これからも、隣にいてくれる?」

雪ちゃんはこくこく頷いて、

「うん。ずっと、ずっと隣にいる。約束」

って、俺の手を両手で包み込んだ。
その手はすごく小さくて温かくて、俺の震えを全部吸い取ってくれるみたいだった。

「……じゃあ、もう一個食べていい?」

俺が言うと、雪ちゃんは照れながら、

「うん。でも……」

って、急にモジモジし始めて。

「え?」

「……あーんってしてほしい」

一瞬、時間が止まった。

俺は真っ赤になって、でも嬉しくて

「……いいよ」

雪ちゃんは恥ずかしそうに目を閉じて、口を少し開けた。

俺は震える手でチョコを一つ取り、そっと彼女の唇に近づける。

「あーん……」

ぱくっと彼女が食べると目を細めて、幸せそうに頰を緩める。

「……甘い」

「雪ちゃんの方が甘いよ」

俺がそう呟くと、彼女は「もうっ!」って俺の胸をぽかぽか叩いてきたけど、すぐにぎゅっと抱きついてきた。

外はもう真っ暗。
でも部屋の中は、電気なんかつけなくても、彼女の笑顔と温もりで、溢れるくらい明るかった。