RECORD

Eno.160 琉華院 いのりの記録

お名前

「そういえば君、お名前はなんていうの?」

「名前…… 僕にはないんだ。ずっと名前のないただの金魚の怪奇として生きてきたんだ。」

「そっかぁ……。ペットならやっぱりお名前欲しいよね?」



「名前、名前、うーん…… イワシくん!しめサバくん!寒ブリくん!

「…………金魚なのに別の魚の名前は…… ちょっと……」

「あっ、そっか……。確かにそうだよね…………。」



「じゃあ…… ひらひらしてるから、ひーくん!」

「ひーくん……。ひーくん、かあ。……うん、いい響き、かも。」

「……!!やったぁ!じゃあ君は今日からひーくんだよっ!」










こんな話を聞いたことがある。

金魚に名前をつけてはいけない。
金魚に名前をつけると、最期を迎えるときに一匹であの世に行くのがさみしくて飼い主を道連れにしてしまうから。



「…………でも、あたし、それでもいいよ。」















「ちなみにだけど、ひーくんってどこまでが名前でどこまでが敬称?」

「『ひーくん』までが名前だよ?」

「……じゃあ敬称をつけるとひーくんさん?

「そういうことになるねぇ……」