RECORD

Eno.279 葦原奏翔の記録

4:争いと過ちと仲直り【葦原奏翔】

トレーニングで能力の制御訓練をしていたが…相変わらず負荷が掛かるものだった
発動しようとする度に
嘗て受けた仕打ちがずっと頭の中に流れてきて
目の前が鮮明にあの時の光景になって
五月蝿い程に罵声や罵倒、誹謗中傷の嵐が聞こえてきて
振り払おうとすると手には指揮棒が握られる、装いも頑丈になるらしく
なにより俺にはずっと付いている悪魔が居た
指揮棒を振れば彼や使い魔が演奏し
出てくる音符や五線譜を操って広範囲の銃撃や斬撃、拘束を可能とする
とまあ、理解しているのはそのくらいだ
後は…………ずっとこうしていたくなる
そんな衝動に駆られる
此れを抑えつければ攻撃や拘束の威力は弱まり神秘の保護、封印まで可能に出来ると思った
それは本性を無理やり抑え込むと同義で心に更なる負荷を齎していたのに彼は気づいていなかった

トレーニングを済ませた後は管理局で少し休んだ
幻覚・幻聴・フラッシュバックという発動トリガーと本性の抑圧という負荷を同時に背負ってしまったが故に精神が憔悴していたのだ
休んだ後、帰ろうとした所
気付けばよく分からない路地に迷い込み
偶々、優希と百華の喧嘩(罵倒や罵声、争いetc)を目撃して
何故だろうか、まるで自分に向けられてるような感覚になり其処からの記憶が朧げで
聞く所、弥久人先輩に止められていたらしく、手に指揮棒を持って能力を彼女達に使いかけたらしい
……それは事実だと思った
朧げだったけれど
あの時、確かに拒絶排除し静寂を願ったのだ

そう自覚したら途端に己が恐ろしくなった
己の感情を制御出来ないまま友人や知人に力を向けようとしたのだから
堂々とした振る舞いなんて本当はそう言った弱さを隠す為の仮面だったのに隠すどころか何もしていなかった彼女達に危害を加えようとしたなんて有ってはならない事だったのに
そうならないように制御しようとしたのに



その後、俺達は謹慎処分を下されそのまま束都高校の保健室へ弥久人先輩と共に足を運んだ
迷惑かけて騒ぎになったからとても誰にも合わせる顔なんてなかったし相手の目がどういう風に俺を見ているのかと思うと酷く恐ろしかった
俺が彼女達や彼等になんて言えばよいか思考が纏まらなくて全て否定されるんじゃないか、怒鳴られるのではってそうして気付けばずっと優希や百華達に謝り続けてた様で
そうしていたらふと、蒼真の奴が彼女達に大分あっけらかんとした物言いで宣うのだから此方も呆気を取られたし彼奴の言葉にツッコんでたら何時の間にか纏まらなかった思考も落ち着いてきて
二人に…皆に漸く謝ることが出来た
これからは気を付けたいと思う
…………思うのだが
どうしたら制御しやすくなるのか依然として分からない、抑えつけるのがダメだったのか…?だが抑えつけねば威力など下がるどころか青天井までありそうだし気付けばずっと演奏し続けかねないとそんな気がする…
そもそもこの力が何なのか
先ずそれを識ることから、なんだろうな
だから俺は、皆と共に保健室の裏へ足を踏み入れる事にしたんだ



【葦原奏翔】