RECORD
Eno.1461 篠崎 駿の記録
Friends
今日のリハビリを終えて部屋に戻ったばかりだった。
シャワーを浴びて汗を流し、ベッドに腰を下ろしたところで、ノックの音がした。
「…誰だよ、こんな時間に」
ドアを開けると、そこにはビール缶を二つ抱えた陽介が立っていた。
いつもの調子でニヤニヤしながら、勝手に部屋に入ってくる。
「おーい、みんな寝ちまったし、久しぶりに男同士で一杯やろうぜ……ってか、部屋で飲むのもいいけどさ、今日はちょっと特別に屋上行かね?」
俺はタオルで髪を拭きながら、少し面倒くさそうにため息をついた。
でも、陽介のこういう突発的なノリに巻き込まれるのは、もう慣れっこだから。
「……ったく、仕方ねえな。ちょっと待ってろ」
適当に着替えて、陽介と一緒に階段で屋上まで上がった。
階段の扉を開けると、冷たい夜風が頰を撫でる。
街の灯りが遠くに広がっていて、頭上には雲一つない夜空が広がっていた。
星が意外とたくさん見えて、思わず息を飲んだ。
陽介は手すりに肘をついて、ビール缶を開けた。
「こんな景色見るとさ……なんか生きてるって感じするわ」
俺も缶を開けて、一口飲む。
冷たいビールが喉を通って、疲れた体に染みていく。
「そうだな…夜空自体見るの久しぶりだったかも」
陽介が横目で俺を見て、ニヤッとした。
「そういやお前さ、雪と付き合い始めてから、夜空見る回数増えたんじゃね? 『雪みたいに綺麗だなー』とか独り言言ってそう」
「バーカ、そんな事言わねぇよ」
俺は軽く肘で突いたけど、陽介はゲラゲラ笑うだけ。
「嘘つけ。絶対言ってるだろ。俺、知ってるもん。お前、雪ちゃんの写真見ながら『今日の月、雪ちゃんに似てるな』とか呟いてたじゃん」
「……誰がそんな痛いポエムみたいなこと言うかよ」
俺たちはしばらく黙って、空を見上げていた。
時々、流れ星がスッと落ちて、陽介が「おおっ!」と子供みたいに声を上げた。
「なあ、流れ星に願い事した?」
「したよ。お前が少しはマシな男になるように、って」
「ひっでぇなぁ!俺の願いは『お前と雪がずっと幸せでありますように』だぞ! 感謝しろよ!」
陽介は照れくさそうにビールをグイッと飲んで、話題を変えた。
「さてと、そろそろ部屋戻って続き飲むか? ここ寒くなってきたし」
「ああ。もうちょっとだけ見てからな」
俺たちはもう一本ずつ開けて、星が少しずつ薄れていくのを眺めながら、ゆっくり屋上を後にした。
部屋に戻ってからが、本当の始まりだった。
陽介がゴクゴク飲んで、満足げに息を吐く。
「お前さ…雪と付き合い始めてから、なんか変わったよな? 心境の変化とか、どうよ? 昔のお前、もっと暗くて一人で抱え込んでたじゃん。雪ちゃん効果か?」
俺は缶を傾けながら、ちょっと照れた。雪ちゃんと付き合い始めて……確かに、変わったかも。
「確かにな…なんか、彼女と付き合うようになってからはなんていうか…俺も少し明るくなった気がする」
陽介が目を細めて、からかうように笑った。
「へー、正に運命の人ってやつ?」
俺は少し考えて、頷いた。
「まあな…なんというか彼女といると胸が温かくなるというか…俺は自分が思っている以上に彼女を愛しているのかもしれないな」
陽介がゲラゲラ笑い転げた。
「お前ってそんな惚気話出来たんだな!昔のお前からは想像つかねぇよ!」
俺たちはそんな調子で、夜中までくだらない話を続けた。
陽介は冷蔵庫を開けて、残りの缶を二つ取り出してきた。
俺はまだ飲むのかと呆れつつも、結局受け取ってしまう。
陽介が隣に座って急に真面目な顔になって、ちょっと声を潜めた。
「なあ、正直に言うけどさ。お前が雪と付き合い始めてから、俺もなんか……安心したっていうか。昔のお前見てるとさ、いつか本当に一人で消えちまいそうな雰囲気あったじゃん。俺、結構本気で心配してたんだぜ」
俺は少し驚いて、陽介を見た。
「……そうだったのか」
「当たり前だろ。親友だぞ? お前が暗い顔してんの見ると、俺までなんか虚しくなってた。でも今は違う。お前、ちゃんと笑うようになったし、雪のこと話すときの顔が……めっちゃ幸せそうなんだよ。見ててこっちが照れるレベル」
俺は缶を握ったまま、ちょっと言葉に詰まった。
「……悪かったな、心配かけて」
「バーカ、謝んなよ。俺はただ、お前が幸せならそれでいいんだよ……って、急にしんみりすんな! 俺まで泣きそうになっちまうだろーが!」
陽介がわざとらしく目をゴシゴシして、俺の肩をバンバン叩いた。
「ほら! 記念に、雪ちゃんに変な写真送ってやろうぜ。『陽介が俺の肩に頭乗せて寝てる』とか」
「やめろ! 絶対誤解される!」
「いいじゃん、修羅場も青春だろ!」
「青春じゃねえよ! ただの地獄だよ!」
結局、陽介のバカみたいな提案で写真は撮らなかったけど、笑いすぎて腹筋が痛くなるくらい喋り続けた。
時計を見たら、もう午前3時近く。
陽介がようやく立ち上がって、フラフラしながら言った。
「…やべ、明日…多分二日酔いでやべーわ」
「お前が誘ったんだろーが」
「そうだな……でも、楽しかったからいいよな?」
俺は小さく笑って頷いた。
「ああ。楽しかった」
陽介は満足そうにニヤッとして、部屋を出て行った。
俺はベッドに倒れ込みながら、スマホを手に取った。
雪ちゃんからの「おやすみ」というメッセージがまだ残ってる。
返信しようか迷ったけど、結局そのまま画面を閉じた。
……明日、直接会って言った方がいいよな。
こんな夜も、やっぱり悪くない。
シャワーを浴びて汗を流し、ベッドに腰を下ろしたところで、ノックの音がした。
「…誰だよ、こんな時間に」
ドアを開けると、そこにはビール缶を二つ抱えた陽介が立っていた。
いつもの調子でニヤニヤしながら、勝手に部屋に入ってくる。
「おーい、みんな寝ちまったし、久しぶりに男同士で一杯やろうぜ……ってか、部屋で飲むのもいいけどさ、今日はちょっと特別に屋上行かね?」
俺はタオルで髪を拭きながら、少し面倒くさそうにため息をついた。
でも、陽介のこういう突発的なノリに巻き込まれるのは、もう慣れっこだから。
「……ったく、仕方ねえな。ちょっと待ってろ」
適当に着替えて、陽介と一緒に階段で屋上まで上がった。
階段の扉を開けると、冷たい夜風が頰を撫でる。
街の灯りが遠くに広がっていて、頭上には雲一つない夜空が広がっていた。
星が意外とたくさん見えて、思わず息を飲んだ。
陽介は手すりに肘をついて、ビール缶を開けた。
「こんな景色見るとさ……なんか生きてるって感じするわ」
俺も缶を開けて、一口飲む。
冷たいビールが喉を通って、疲れた体に染みていく。
「そうだな…夜空自体見るの久しぶりだったかも」
陽介が横目で俺を見て、ニヤッとした。
「そういやお前さ、雪と付き合い始めてから、夜空見る回数増えたんじゃね? 『雪みたいに綺麗だなー』とか独り言言ってそう」
「バーカ、そんな事言わねぇよ」
俺は軽く肘で突いたけど、陽介はゲラゲラ笑うだけ。
「嘘つけ。絶対言ってるだろ。俺、知ってるもん。お前、雪ちゃんの写真見ながら『今日の月、雪ちゃんに似てるな』とか呟いてたじゃん」
「……誰がそんな痛いポエムみたいなこと言うかよ」
俺たちはしばらく黙って、空を見上げていた。
時々、流れ星がスッと落ちて、陽介が「おおっ!」と子供みたいに声を上げた。
「なあ、流れ星に願い事した?」
「したよ。お前が少しはマシな男になるように、って」
「ひっでぇなぁ!俺の願いは『お前と雪がずっと幸せでありますように』だぞ! 感謝しろよ!」
陽介は照れくさそうにビールをグイッと飲んで、話題を変えた。
「さてと、そろそろ部屋戻って続き飲むか? ここ寒くなってきたし」
「ああ。もうちょっとだけ見てからな」
俺たちはもう一本ずつ開けて、星が少しずつ薄れていくのを眺めながら、ゆっくり屋上を後にした。
部屋に戻ってからが、本当の始まりだった。
陽介がゴクゴク飲んで、満足げに息を吐く。
「お前さ…雪と付き合い始めてから、なんか変わったよな? 心境の変化とか、どうよ? 昔のお前、もっと暗くて一人で抱え込んでたじゃん。雪ちゃん効果か?」
俺は缶を傾けながら、ちょっと照れた。雪ちゃんと付き合い始めて……確かに、変わったかも。
「確かにな…なんか、彼女と付き合うようになってからはなんていうか…俺も少し明るくなった気がする」
陽介が目を細めて、からかうように笑った。
「へー、正に運命の人ってやつ?」
俺は少し考えて、頷いた。
「まあな…なんというか彼女といると胸が温かくなるというか…俺は自分が思っている以上に彼女を愛しているのかもしれないな」
陽介がゲラゲラ笑い転げた。
「お前ってそんな惚気話出来たんだな!昔のお前からは想像つかねぇよ!」
俺たちはそんな調子で、夜中までくだらない話を続けた。
陽介は冷蔵庫を開けて、残りの缶を二つ取り出してきた。
俺はまだ飲むのかと呆れつつも、結局受け取ってしまう。
陽介が隣に座って急に真面目な顔になって、ちょっと声を潜めた。
「なあ、正直に言うけどさ。お前が雪と付き合い始めてから、俺もなんか……安心したっていうか。昔のお前見てるとさ、いつか本当に一人で消えちまいそうな雰囲気あったじゃん。俺、結構本気で心配してたんだぜ」
俺は少し驚いて、陽介を見た。
「……そうだったのか」
「当たり前だろ。親友だぞ? お前が暗い顔してんの見ると、俺までなんか虚しくなってた。でも今は違う。お前、ちゃんと笑うようになったし、雪のこと話すときの顔が……めっちゃ幸せそうなんだよ。見ててこっちが照れるレベル」
俺は缶を握ったまま、ちょっと言葉に詰まった。
「……悪かったな、心配かけて」
「バーカ、謝んなよ。俺はただ、お前が幸せならそれでいいんだよ……って、急にしんみりすんな! 俺まで泣きそうになっちまうだろーが!」
陽介がわざとらしく目をゴシゴシして、俺の肩をバンバン叩いた。
「ほら! 記念に、雪ちゃんに変な写真送ってやろうぜ。『陽介が俺の肩に頭乗せて寝てる』とか」
「やめろ! 絶対誤解される!」
「いいじゃん、修羅場も青春だろ!」
「青春じゃねえよ! ただの地獄だよ!」
結局、陽介のバカみたいな提案で写真は撮らなかったけど、笑いすぎて腹筋が痛くなるくらい喋り続けた。
時計を見たら、もう午前3時近く。
陽介がようやく立ち上がって、フラフラしながら言った。
「…やべ、明日…多分二日酔いでやべーわ」
「お前が誘ったんだろーが」
「そうだな……でも、楽しかったからいいよな?」
俺は小さく笑って頷いた。
「ああ。楽しかった」
陽介は満足そうにニヤッとして、部屋を出て行った。
俺はベッドに倒れ込みながら、スマホを手に取った。
雪ちゃんからの「おやすみ」というメッセージがまだ残ってる。
返信しようか迷ったけど、結局そのまま画面を閉じた。
……明日、直接会って言った方がいいよな。
こんな夜も、やっぱり悪くない。