RECORD

Eno.115 古埜岸姉弟の記録

EP.0 月夜にひらけ、幽冥の門 [1]

『誕生日おめでとう、八千代』


『父上!』


『誕生日おめでとう、八千代』


『父上』


『誕生日おめでとう、八千代』


『今更誕生日ってのもな』


              


「父上の仇」


霞目かすみめの暗殺者」



裏世界。
雇われの殺し屋として生きてきたトラジックハンドIIは、
アザーサイドコロニスト、架橋部ブリッジャー所属の
古埜岸希咲に拾われる形で足を洗った。

その直後だ。
彼奴のカラダが使い物にならなくなったのは。

異能『幽鬼の腕』。
不可視の腕で、どこからともなく獲物を喰らう。
暗殺者人生の要となったそれは、
彼奴が人殺しをやめた途端、
彼奴自身を獲物とした。

今や晩年、生命を啜られながら病床にいる。


『八千代。
 怪盗の盗みとは美学に基づくものだ。
 命を奪っては、殺人や強盗だ』


「殺すまでもない。
 ワタシが奪うのは──」












「胎動が……確認できなくて
 生まれて」


「これないのかも、しれない」


「──」


「だめだよ。
 泣いちゃダメ、オモテなんだから」


「虎徹には秘密。

 この子は虎徹の希望だから。
 虎徹には、せめて最期ぐらいさ」


「光の中で眠ってほしい!」













「怪盗……………………」


「なん で」


「死んだはず、なの に」





“眠りを待つオマエの光を
いただきに参上する

      怪盗ヤツカガミ”