RECORD

Eno.88 御子柴 桜空の記録

桜隠せし、慕いを梅に



……夢を見た。

『酒吞童子』の手によって、『鵺』として生まれることなく。
実験体として、祀り上げられた教祖として生きることなく。

ただ一人の少年として、俺がそこでただ過ごしている夢。
今まで出会ってきた人とは、誰とも出会わない。

外の世界の悪意を知らない。輝きを知らない。普遍的な誰かとして。

のんびりと。ゆったりと。ただ、当たり前の一日を終えていく。



───それが夢でないと気づいたとき、おれは、






「……」


気付けば裏世界にいた。なんでこんなところにいるか分からなかった。
不思議に感じながら、道を思い出して、表へと帰っていった。

……何かを忘れたまま。