RECORD

Eno.602 志村ウシロの記録

志村ウシロの裏世界日記(記録)

野山の奥、薄暗い場所。
裏世界に来た。

駅前の扉から入って、しばらく歩いたら、野山が広がっていた。
表世界の地形とはまるで違う。木々はねじれて空に向かい
地面には光る石ころが散らばっている。

夕暮れと明け方が揺らめく空の下、どこか懐かしい…
深界の光に似た色が遠くに見えた気がした。

「魔眼よ、魔眼…夢の続きを…」


魔眼を開放してみた。
右目が熱くなり、原色の靄が視界に広がる。

青や赤の残留思念が、木の根元や草の間から立ち上っているのが見える。
ここは表世界と違って、神秘が濃い。

魔眼が疼くたびに、まるで自分がその一部になるような感覚がする。
不思議だ…。
神秘を追いかけていると、だんだん気分が良くなってきた。

体が軽い。頭の中がスーッと晴れるみたいだ。
深界に近づいているのかもしれない。

この感覚、嫌いじゃない。
でも、ちょっと変だ。

さっきから、視界の端で何かが動いている。
木々の間から、黒い影がチラチラ見えるんだ。

最初は気のせいだと思ったけど、魔眼が反応する。

「あれ、何だろうな…影じゃない…。」



何か、形のないものが、僕を見ている。

深界の光が一瞬だけ見えた気がしたけど、その奥に…何かいる。
笑い声みたいな音が、頭の中に響いてきた。
気分がいいはずなのに、背筋がゾッとする。
この感覚、どこかで…。

初めて魔眼が宿った時、深界の向こうで僕を見下ろしていたあの存在に、似ている。
もう少しだけ、ここにいよう。

深界に近づけるなら、この不穏な感覚も悪くない。
でも…少し怖い。