RECORD

Eno.232 月影誠の記録

5/11

思いっきり学生寮の交流スペースで寝てた。
朝起きたら身体バッキバキだった。
ちゃんとベッドで寝よう。

朝は学生寮で何でもない雑談をした。
ザリガニの話とか、虫食の話とか、メロンフロートについてるさくらんぼとか。
メロンフロートについてるさくらんぼガチ勢は多い。学んだ。

ネム先輩に将来のことを聞かれた。
将来はあんまり決まっていないけれど、猟師になりたいと考えている。
自分の趣味の延長線だし、兵庫の中部の山奥で猟友会に入ってひっそりと暮らす……
なんて、凄く理想的だなあ、とは思うけれど。
いないんだよなぁ、ザリガニ……自然が綺麗すぎて……
あとは裏世界に行くことを誤魔化しづらい気もする。
田舎って横の繋がりが強いことが多いし……
大学には行かないつもりだけど一応未定。

それと、ネム先輩も『こちら側』だったらしい。
知ったときの俺、変な顔してなかったかな。してなかったらいいな。




昼と夜は虚戯さんと北摩川までザリガニ釣りに行った。
柏雅と夜遥が居たから釣りに巻き込んだ。
あとザリガニガチ勢の人が居た。マジでガチ調理勢だったあれ。
途中でやってきた京にはウチダザリガニを食わせておいた。満足。

虚戯さんは、結果に対する経緯に興味を引かれる人だと感じた。
解の公式を覚える際、その公式の求め方を気になる人だと。
点を線にすることが上手いのだと、ようやっと理解した。
否。この人の美学には、俺は触れられない。
けれど。


「そうだね。ものごとの成り立ちを調べるのが好きだから
 っていうのもあるけれど、もっと感覚的に言えばそう……」


「道理にかなうものは美しい」


「かな」



「生態や文化、人格等、あらゆる事象に連なる合理的な過程」
「その一連を頭の中や文面に書き出したとき、
 俺にはそれが一本の大きなに見えるんだ」


「それを『美しい』と感じる。」



―― 美しい、と思った。
どこまでも妄信的に、狂気的に、己の信ずる美しさを求めるこの人が。
桜の散り際、ガラスの破片、シャボン玉の破裂の瞬間。そういう美しさをしている。





「4歳のときに、近所の子供がくれた凧糸。
 ザリガニ釣りに混ぜてくれて、大切に今も持っている……
 泥だらけで、泥臭くて、スルメの匂いもする俺の釣り道具」


「奇遇だな、同じ糸だ」


俺が『人間』で居られるための、希望となっている。