RECORD

Eno.472 志瀬津 拳悟の記録

幼い日の記憶2

「お兄ちゃんは私のヒーローだから。」

そう言われたのを強く記憶している。

妹に何かあれば、俺はいつも駆けつけていた。駆けつけるようにしていた。

母に似てなのか、妹は身体が弱かったし優しかった。

自分が虐げられていたとしても、相手を心配するようなそんな子だった。

だから、俺は守った。ずっとずっとずっと。

前を歩いて、スズカの手を引き続けた。

俺はあの子を守らなければならなかった。それなのに、あの日。

気づいたら、妹はいなくなっていた。自分も、倒れていたらしい。

目覚めたら、祖父が自分を見つめていて、意識を取り戻したことを喜んでいた。

でも、スズカは?と聞いても、首を振るばかりで何も教えてくれなかった。

行方不明になった、とだけ。

父親はそんな状況なのに、仕事を優先し海外に行ったのだと祖父は言う。

だから、嫌いだ。父親は。祖父と自分のように妹を探すこともなく、仕事を優先した。

許せなかった。

けれど、なにより許せないのは自分自身だろう。

妹を見つけねば。見つけて、守らなければならない。

それが、俺の。母から、妹から望まれた役割なのだろうから。

でも、もし。

妹が死んでいたら?死んでいて、俺は役割を果たせていなかったら?

……俺は生きている意味があるのだろうか。