RECORD
【遭遇】⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎と、?
「んふふ、本当にいい天気」
大小の綿雲が彩る快晴の青。
今日はバイトの日。 いつもよりずっと早めに家を出て、整備された補導を歩く。
鳥の声。足の音。車の街路樹に風が吹いて、さわさわと踊り出す。
「ひなたは……オープンから入って14時迄だから……終わったらろろぽーとにでも行こうかしら。」
折角なら誰か誘おう。急だけど、空いてる人居るかしら。
───────ぽこん!と飛んできたお誘いのメッセージを見て、詳細も聞かずにOKの返事を送った。
モルモッティ……が何かは分からないけど、楽しい事を見つけるのが得意な彼の事だ。素敵な場所に違いない。
歩きながらスマホを開く。
視線を落としたからだ。だからきっと見落とした。
返信に満足して、顔を上げる───────その時になって、漸く異変に気づく。
「…………何処、ここ」
さっきまで澄み渡っていた青空は、淡い黄色に染っている。まるで朝焼けの色…………
「どういうこと?」
最近は日が昇るのも早いから、その色が見れるのは短い時間……少なくとも、今は到底見れない色なのに。
似たようで全く違う景色。
草木は暗く、壁は歪に。とてもいつも通りには見えなかった。
(…………なにか、起きてる?)
───────ズン
「ひっ…………」
遠くで音がした。何かが揺れた音。或いは倒れた、進んだ、落ちた?
分からなかった。だって何もしらないのだ。
見知ったカーブミラーに知らない景色が映る。知らない壁に紫の蔦が絡んでいる。
空は淀み、鳥の声は聞こえない。
家のなりそこないばかりがならぶ、ニセモノの住宅街が広がっている。
「……、そ、そうだ電話、にいさんに……」
さっきまで見ていたスマホをもう一度開いて、電話帳の兄を探す。
掛けようとして、掛からない。
「なんで……ッ、圏外?!そんなはず」
ない、と言いきれなかった。産毛立つ異質と違和感。まずい恐いと分かるのに、対処が分からない。
───────ズン
「…………か、隠れよう」
だからそう考えるのは自然だった。
見知らぬ建屋の中に入り、隠れられる場所を探す。あまり奥に行き過ぎると逃げられなくなる、かと言ってドアや窓のそばは…………きょろきょろと考えられる事を必死に纏めながら。
……ふと、その部屋の中央に目が行った。
「…………工具箱?」
不釣り合いな白い箱。なんとなしに……本当に何となく。手に取って観察する。思えば現実逃避だったのだろう。違和感の中の違和感。感覚が正常に動いていれば、触れすらしなかったろうに。
「工具にしては軽いような……」
深みのある水色のライン、工具箱と口を着いて出たものの、サイズ感や重さは家で使うメイクポーチが近いかな。
持ち歩かない、化粧水とか入るタイプの……
───────ズシン
揺れる、その音に引き戻される。
さっきよりも近く、振動も強い。
こちらに向かっているのか、通り道なのかも分からない。心做しかざわつき始めた気配に顔を青くしながら、その両手が震え始める。
どうすれば……そう、ぐるぐると思考をかき混ぜたその時だった
「い、いた……!」
「大丈夫ですか?いやはや、調査に出るなり危険域へ向かう方がいたので……追いかけてよかったです。」
「大丈夫です!この北摩イチの神秘ハンターが───────
───────自分を助けに来てくれた、その手に安堵するまま、引かれるまま。
向かう先は裏世界の綻び、見慣れた街並みの出口へと。
日は登ることなく。朝焼けが無慈悲に微睡んでいた。
曇りない日常へ戻っていく。
日は上り、お天道様が元気に笑っている。
何事もなく。あぁきっと、あれは夢だったと…………
───────あれは夢だったと忘れるには、くっきりとした白をその手に。
綿雲の浮かぶ日常へ戻っていった。
………どうしましょう、と眉を顰める22時。
バイト先で迷いながら、立ち寄ったカフェで癒されて忘れながら、ついに家まで持ち出してしまった白い箱。
私あの場所から連れ出してくれたお姉さんは、私のものだと勘違いしていたけれど。これは私のものではない。……あの不気味な状況下。もしかしたら、誰かが置き忘れて行った大事なものかもしれないのに。
電気の光に照らされ淡く滑る光沢を見て、眉を寄せる。








