RECORD

Eno.295 ーの記録

5.帰宅。

「明日の朝の見送りとお弁当に……お夕飯までは作っておくけど、
 アイカが学校から帰ってくる頃にはもうお姉ちゃん、いないから」
「そっか」
また友達が増えたことを姉に話したりして。
お土産のバターミルクケーキを二人で食べながら、姉がそう言った。
仕方ない。決まっていたことだ。

「そんな顔しないの。暇があったら遊びに来てあげるから」
顔に出ていたらしい。

「別に。一人でも大丈夫だよ」
「友達ができたから?」
「……おかげさまで」
姉が来てくれなければ。ボクは一人だったかもしれない。
それで良いと思ってたから。でも。

「ありがと、ね」
姉にお礼を言う。

姉が居なければ。ボクは生きてはいけないのだ。だけど。
姉にはもう1つ、尋ねておきたいことがあった。

「ねえ、お姉ちゃん」
「なに?」

言うべきか、いや、帰るなら。尋ねておかきゃいけない。

「なんでお姉ちゃんは家の外に出なかったの?」

そう。姉はボクの金銭面全て面倒みるレベルの過保護なのだ。
北摩の街についていって一緒に外食したり、
夜遅くに帰ってこないボクを迎えに来ることくらいは。
簡単にできたはずだ。なのに、そうしなかった。
というよりも……そもそも、姉が家の外に出ている姿を見なかった。

「……言えないかな、今は」
「そういう神秘ってやつ?」
「……こっちじゃ、それは気軽に口にしちゃダメ」
そうだった。まだこの世界のルールに慣れない。

「……本当に、変わった世界だ」
「そうだね」
姉はボクの事を知っている。つまり、ボクが居た他の世界の記憶もある。
そういう意味では、ボクの好き勝手にしていることは、
姉を巻き込んでいることにもなるけど。

「……とにかく。こないだも言ったけど、外食ばっかりはダメだからね」
「はーい」
「お姉ちゃんが居ないと、アイカはすぐだらけるんだから」
「それだけ頼りになる姉が傍に居るからね」
「今回は傍に居られませんから」

ーーーーーー

……。

就寝前。
姉が悩んだ様子で。でも。

「……そうね。お姉ちゃんばっかり聞かれるのもだから。
 アイカにも聞いちゃおうかな」
「んー?どしたの?」

「なんでこの世界では偽名を使おうと思ったの?■■■■」
「……」
姉に本名で呼ばれて。少し黙ってから。

「天邪鬼だから、かな」