RECORD

Eno.172 小谷 侑一郎の記録

再投稿動画:【ASMR】AM4時の木のスープ

【ASMR】AM4時の木のスープ|relaxing wood soup|No talking
<コウタ@ASMR&バイノーラル配信 @KOTA_ASMR>
(202×/××/×× 再投稿動画)

大学の頃に撮ったASMR動画の再投稿。
昔の作品なので低音質、鳴らし方も下手くそだけど需要があれば。

■WaveD:@KOTA_ASMR
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 薄暗い手元カメラには柔らかな卓上ライトに照らされた木のボウルが写っている。さぁ眠ってくださいと言わんばかりに暗い色で纏められたデスクに対照的なオレンジ色の暖かな自然の色だ。
 カメラの画角に男の手が入ってきて、軽く手を振って離れていく。この配信者はいつもそうして動画や配信を始めるらしかった。

 若い男の手が画面を離れると代わりに、ボウルと同じ木製のスプーンが現れる。それを使って、ボウルの表面をすりすりと撫でまわし、控えめにコツリ、コツリと底を突いたりする。そうしてボウルの形と感触を伝える。

 画面の外でカサカサと袋の音がしている。所謂『ウッドスープ』というジャンル作品には要らない音。前もって袋から出しておけば良いものを、この頃の男はそうした配慮に思い至らなかったよう。
 ややもたついた後、木のスプーンにこれまた木でできた球を乗せて画面へ帰ってくる。ころり、ボウルの中へ投入し、ボウルと球が擦れ合う音を聴かせていく。
 球を動かすスプーンとの衝突音はコツンカツンと軽く、緩やかにカーブしたボウルを転がる音はグルグルと低く唸るように響く。

 続いて、同じ大きさの球を少しずつ投入していった。コロリ転がってボウルの中心で既に居た玉とぶつかる。次々と投入されればボウルの反響が変わり木で満たされる音がする。
 じゃら、ころろ。少しかき混ぜて動きの滑らかさを楽しむと、またしてもモタモタしながら水を注ぎ始める。
 水は細く緩やかに器を満たし、軽い木の玉は互いにぶつかり軽い音を鳴らしながら水面に浮き上がっていく。水のゆらめきに合わせコロコロと不規則に鳴るのは、ガラスコップの氷とは違う優しい音だ。

 更に具材は増える。先ほどより一回り小さな四角い木のキューブがやや高所から落とされ、トプンと水を散らして弾けた。ぽちゃん、からん、丸い玉とぶつかるもの、勢いで深くまで沈んで浮き上がってくるもの。
 更にグリンピースのような小さな粒まで足されるとやっと、待ちに待った具沢山のスープが出来上がった。

 待ちきれないというように木の料理へとスプーンが沈む。少し動かすだけで沢山の具材がそれへ引っかかり匙の上へ乗り上げて、ガララと大きな音になる。
 配信者の手元の動きに戸惑いが見て取れた。結局入れすぎた具材を何度か掬い出して調節する羽目になっている。
 始めたばかりの配信者には加減がわからぬ。分からんなりに恐れずにやっている。

 そうして具材が適量になったらばやっと本題に入るのだ。
 水に濡れ、しっとりと音の変化した球をゆっくりとかき混ぜる。カメラはつやつや輝く水と木の具材のゆらめきを静かに映し出した。
 ちゃぷ、ころろ。かき混ぜられ、渦に従って流れる具材はスプーンへやわく衝突する。コ、コ、と小さな抵抗の音を立てながら、小さな障害物をするりとかわして流れに戻ってゆく。
 気まぐれなスプーンが具材を水と共に掬い上げると、少し高い位置から再びボウルの中へ。トプン、水に潜る音。回転の力を持ったまま、隣り合う木の具材を擦る音。

 ぷくり、ちゃぷりと水が従う。
 眠りにきた視聴者ならばもう目を閉じていることだろう。手元カメラの映像も非日常で可愛らしいが、もし視覚の情報を断ってしまえば小さなボウルは広いプールのように変わり、己がスープの具材に混じってしんと暗い水を泳いでいく感覚にもなれるだろうか。

 耳元で木と木が触れ合う。擦れる、溢れる、弾かれて散らばり水に沈んでは浮かび上がる。
 静かな夜のスープの中を意識が泳ぐ。
 ゆるく優しく混ぜられて、ゆらゆらと流されて。ひやりとする暗い水の中に溶かされていく。

 そのまましばらく労るような静かな木の音を聴かせ──やがて画面はフェードアウトし完全な暗闇と静寂へと戻っていった。