Eno.607 赤座 花子

■ 赤座花子の独白

 
目前に高く迫り上がる波が映る。

岩場に打ち付けられては弾ける水の塊は、普段と全く違う嵐の様相だ。

少し離れた陸地に、先程まで持参していた荷物が見える。

他には何も無い。豪雨の中に立つ者は1人だけだ。

周囲を一瞥する。分厚い雲に覆われて、今が朝か夜かも定かでなくなるほど埋め尽くされている。

私はそれを良く確かめて、岩場から身を投げ出した。
息を止め、目を閉じて、意識を手放そうとした。








「相変わらず何で生きてるのかしら私」



「予想はしていたのだけど、
 やっぱり流れが逃がさないようにしてるみたいなのよね。
 とはいえ無傷だとは思わなかったわ……寧ろ雀卓が曰く付きなのかしら……



「お洋服濡れちゃった。まあ、嵐の中だもの、どちらにせよ関係無いかしら
 バレると煩い人達には見つからないようにしたいわね。
 ウィーちゃんとか子月ちゃんとか……彩乃ちゃんや日向くんに捕まっても面倒そうだわ……」



「考えるのは後にしましょうか。
 早く帰らなきゃ冷えちゃうわ」



「嵐、今日中は続くかもね」