Eno.105 音祇葉 なしな・クユーノティオン

■ 帰:島流終幕




『在るべき世界』に、私は戻った。



海水浴ごっこを楽しんで遭難することとなった、あの世界だった。

…この世界はただの世界ではなかった。

私があるべきでない『外側の世界』と、『私が在る領域』を繋ぐ場所。
厳密には世界ではなく、道だった。

経験した今なら、わかる。
『外側の世界』に適合できず、完全に矮小な物理存在へと堕ちる私だからこそ
その性質を見落としていたのだと。


――――――


途絶した御伽噺へと、観測されず観測する者へと戻る前に、祈る。
それが届くことは無いと判っていながら。
それでも祈るのが、ひとというものだから…

ひとつの存在として。
かかわりを持った、縁を持った、ひとりとして。
共に生きた皆に。



「納得できる終わりを、迎えられますように」


「欲を言えば、生き続けて…いつか遠い日に微笑んで終われますように」






――――――

知った限りでも…
夢の中から絶望の二文字と共に叩き落とされたような者が居た。
全てを失ったという、焼け跡を思わせる者も居た。
きっと、終わろうとしているであろう者だって居た。

それでも、幸せを祈って…―――




―――――――…


そうしてそれは、『理の向こう側』へと戻っていった。