本質はとても臆病で心優しい。献身的だが独善的。喪うのが怖いから遠ざけ、傷つけたくないから寄せ付けない。自分の孤独より何より、優しい人が不幸を被ることが許せなかった少女である。
彼女が変貌を遂げたのは、家族の死を経験してから。善人が当たり前に幸せになることを否定した世界への憤りが彼女を変えた。
端的に言えば自己犠牲と運命論のアンチ。我欲のために生きることのみを肯定する復讐者。何より許せないのは、幸せを破壊してなおのうのうと生き続ける自分自身。
それは同時に、世界がまだ正しい形に戻ることを期待しているからである。
得物は仕込み刀。パラソルに仕込んだ細身の刀の居合いで戦う、華奢な見た目に反したインファイター。
日常においてはペットボトルの蓋を自力で開けることすら困難な非力であるが、身体能力の不足を神秘で補った神速の居合いを好んで使う。
当然ながら反動は大きく、無理な動きの代償から、継戦能力は低め。
よく食べるのも能力の使いすぎによるガス欠を補うため。
その正体は兵法円流二十三代目宗家であり、円統一朗の名を継ぐ現代の剣豪である。中学一年生にして次期当主と目された兄を差し置いて相伝と相成った生粋の剣鬼。
円流は修験道に由来する流派であり、神秘の行使を前提とした技を多く持つ。これらの「裏」の技術は相伝であり、一般的な円流では継承されない。
クローヴの香りの正体は刀の手入れに使う丁子油。パラソルに仕込んだ銘刀「つき」を含む真剣、三振を隠し持っている。
何があったのか
詩否が円統一朗を襲名して数ヶ月、事件は起きた。兄による無理心中である。
不意打ちされたことで真っ先に重傷を負った詩否を庇う形で両親や前当主だった祖父はこのとき兄に殺されている。
最後に見たのは自身に刃を突き立てる兄の姿。その後、皮肉にも詩否は負傷によって喪った臓器を兄のもので補う形で生き永らえた。
裏の事情も複雑に絡むこの事件は表沙汰になることはなく、まるで不運な事故だったかのようにひっそりと幕を閉じる。
そうして生き延びてしまった詩否は、それでも兄を恨めなかった。兄の面目を潰し、追い詰めた自分自身を憎むことで折り合いをつけたのである。
己のような剣鬼が産まれたばっかりに家族は死んだ。それでも生きろと乞われたからには贖罪のために生きる必要があり、剣士としての誇りを貶められた先の死でなければ許されない。
だから詩否は今日も夜の街を往く。他者の幸せを脅かす者を一人でも多く斬るために。その果てにある許しを夢見て。
詩否の扱う神秘について
本人曰く「自己認識を改竄することで瞬間的に肉体を変質させる単純な肉体強化」。自分にしか効果は及ばない力であると彼女は言う。
実際はごく繊細なコントロールにより生体電流を操作して超加速を可能にしていたり、すさまじい膂力を発揮したりと、肉体を強化することで可能なことはだいたいできる。
また、集中によって「技を降ろす」のが円流の相伝であり、詩否の奥の手。いわゆるトランス状態であり、この状態の詩否は負荷を無視して戦うようになる。
当然ながら、か弱い少女の体で使う設計ではない技も含まれるため、負荷は甚大。不退転の覚悟で使う諸刃の刃である。
相伝とは別にもう一つ、自分と周囲の神秘率が高い状態でしか使えない奥の手もあるというが……?曰く「見世物ではない」「タネが割れたら意味がない」ため、不明
願い

「わたしの願い?『みんな』が、幸せになることよ」


ENO.2974


























