RECORD

Eno.26 朔 初の記録

ななつめ

「……」

黄昏時、夕暮れ時。
朔初は学校内のトイレにいた。
鏡を求めて、洗面台の前に立つ。

「やば」

げえ、と。
苦虫噛み潰したみたいな自分の顔が浮かぶ。
夕方の夕暮れがトイレ内にも薄らと差し込んで鏡に当たっているな。
部屋はまだ暗くはないだろう。

結局。
編まれた後、リボンだらけの髪にされた後。
朔初は、この時間までそのままにしていた。
クラスでは奇異な目で見られたかもしれないし、廊下、歩いてる時だって。
そんな視線は気にならない。
目を引くからひととき向くだけなのだろう。
すぐに引く波のように目線は外れる。
関わりがないから。
後に残るは陰口かな、なんて。
それはいくらなんでも、穿った味方だから、捨て置いた。

「…」
小さい手先は髪に。
細っこい指先は、布に触れれば解いていく。
一つ、二つ、三つ。
解いた布を見ながら。
割と丁寧に編み込まれていることには気がついた。
手先は器用なちいこいこらしく。
可愛らしいのがすきそうなちいこいこらしい。

しかして。無視しておけばとりあえずは飽きるとわかったのは良いことだった。
対処がしやすいし楽な方。
次はないかもしれないが。
またねと言う言葉は、朔初にとって福音ではなく警戒だった。
子供は執着すればしつこいものだものな。
しばらくは我慢か。


ほどき終えて、カバンの中に潜ませておいたブラシを取る。
ほんとねこっけで嫌になるな。
これから梅雨時だと言うし。
髪が膨らんで、まとまんない。
櫛だとよく引っかかるからブラシだし。
かと言って。



「………」


そうするうちにトイレから退出をした。
外に出れば黄昏時。
夕暮れの空は赤を示している。


止まれ。


──髪を解いた。


──髪を解いた。