RECORD

Eno.139 浮季草 斂華の記録

鏡写し/し写鏡

 中学に上がると、制服になる。
 別に、制服を着るからといって何が変わる訳でも無い。進学先も、数年前からズボンとスカートが選べる様になっているらしいけれど、 [ズボン/スカート] を選んだからって、[男/女]らしさの証明にはならないし、 [男がスカート/女がズボン] を選択したって [男/女] らしさの証明にはならないだろう。
 入学式前日の夜、部屋の鏡の前で制服を着た自分を見て思う。

「……似合/わねー」


 どちらかといえば、違和感だ。
 [男にしては小柄/女にしては大柄] な体躯。
 男女を分けるステレオタイプとしての [ズボン/スカート] を入れ替えたとしても成立しそうな [未発達/少々大柄] な格好に、苦笑いする。
 ただ、これでもう [女々しい/男勝りだ] と言われる事は無くなるだろうか。ぐ、と拳を握り込んで、鏡にこつんと突き当てる。
 今の自分を確かめるための行為。ただそれだけの筈だった。

 ぐにゃり。

「……\……?」


 一瞬、視界が歪んだ気がした。
 ただ、一瞬の目眩として認識したそれを思う間に、背後の時計の時間が目に入る。もう寝に入るにも丁度いい時間だ。

「……寝るかー。」


 いつもと違う心情を得た一日を終えるため、就寝の途につく。
 ……鏡写しになった筈の時間が、すぐに認識できたことにも、取り返しのつかない変化が、既に起きていた事にも、全く気が付かずに。