RECORD

Eno.44 梅園プラムの記録

プラムとうめうめ

 日本に来るまでの私は、ただのプラムでした。
 プラムという形をした、使命を果たすだけの存在に過ぎませんでした。
 そんな私を、変えてくれた方々が居ます。

 コンちゃん先輩は、多様性という輪郭を、万物の受容を教えて下さいました。
 マツタケ先輩は、隣人を見据える瞳を、個たる隔たりによる平穏を教えて下さいました。
 やがて得られたうめうめという存在は、プラムにとっての安らぎとなりました。
 雨先輩は、うめうめを他愛ないやり取りで繋ぎ止めて下さいます。

 そうして作られた私は、隣人たちと共に日々を謳歌しました。
 母様が教えてくれたように、人の世は日々面白いに満ち溢れています。

 けれども未だに、私に向けられる感情というものが、あまり分かりません。

 喜ばれたなら、よいことです。
 怒られたなら、わるいことです。
 哀しまれたら、わるいことです。
 楽しまれたなら、よいことです。


 それらに対して何かを想うことは使命の邪魔なのだと、父様が言っていました。
 この身体に宿った神秘が、父様の言葉が、未だにプラムを苛みます。
 母様は、もう気にしなくてもよいのだと、言っていました。
 けれども、この世界は神秘によって不安定です。

『神なる秘匿を狩り尽くせ』
『終わり無き咎を鋸刃で削げ』
『我らが凶刃は 隣人のために』


 父様の最期の言葉です。
 きっと、それは私の役目なのです。
 役目を果たせば、隣人たちは救われるのです。
 そういうものですから。そういうものなのだから。

 だと、いうのに。
 神秘たちは、表情を持っていました。
 人間のようでした。我らの隣人のようでした。
 彼らは最初から人間ではなかったのに。


何故ですか、父様。
どうしてですか、父様。
わかりません、私には、どうしても。


 今日もプラムは裏世界を歩きます。
 歪な神秘を削ぎ落とします。
 咎を背負い続ければ。
 いずれ私は。

 ただのうめうめになれるのでしょうか。