RECORD
Eno.560 綴 椛の記録
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くしゃり。震える文字の並んだ便箋を弱く握る。
よれた紙を伸ばしてから小さく折り畳み、鞄のポケットへと押し込んだ。

すう、と息を吸って、吐いて。
何度か繰り返して落ち着くと、改めてペンを握りしめた。
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手が止まる。
ペンを置く。
今は、この先を綴る勇気はなかった。
■通目 神秘
お兄ち ゃん へ
神秘 のこと を教え ても らいまし た。
ゆうれ いの

「……字、がたがた。
こんなのじゃ、お兄ちゃんも読みにくいよね……」
くしゃり。震える文字の並んだ便箋を弱く握る。
よれた紙を伸ばしてから小さく折り畳み、鞄のポケットへと押し込んだ。

「……書き直そう」
すう、と息を吸って、吐いて。
何度か繰り返して落ち着くと、改めてペンを握りしめた。
お兄ちゃんへ
神秘のことを教えてもらいました。
かんたんに言うと、よくわからないものは全部神秘なんだって。
表の世界で完全に否定されたら消えちゃうから、
みんなに知られて消えないようにだまってないといけないの。
だからゆうれいも本当にいて、全部私の空想なんかじゃなくて、
私がおかしいんじゃないってわかったのは少し安心しました。
でも、それを聞いて思ったんです。
おばけは本当にいて、おばけは神秘で、じゃああのとき

「……」
手が止まる。
ペンを置く。
今は、この先を綴る勇気はなかった。