RECORD

Eno.582 三月粉雪の記録

真実とは、人を救うものである。

……と断言はできない。
例えば、浮気調査の依頼があったとして。
その浮気現場を捉えた時、私はきっと依頼者の助けにはなれただろう。
だがそれは同時に、浮気者と浮気相手二人にとっては災難になるわけで。
法的な善悪を置いておくなら、私は。
人ひとりを救うために、人ふたりを犠牲にした外道という事になる。
もちろん、悪いのは操を放棄した者達であり、彼らからの憎悪を買ったとて
それを気に病むほど私は繊細な人間ではないのだけれど。
つまるところ、結論としては。


『真実とは、人を救うもの』ではなく。
『真実とは、救う人を選ぶもの』であるという事。


だからこそ、真実を取り扱うものは公平でなくてはならない。
たとえその真実で友人や、身内や、あるいは家族が不幸になるとしても。
確固たる意志を持って、真相を解明できなければならない。
探偵に資格はいらないけれど、もし探偵になる資格があるというのなら。
それは、この覚悟や実績を持っているか否か、になるのだと思う。




私は資格を持っている。