RECORD

Eno.662 辰森 ユキの記録

ある日の会話

「えぇ?んんー、流石にちょっと賛成しかねるかなぁ……
長い付き合いがあればいいってもんでもないけどさ、知り合って一週間やそこらじゃない。
言いふらしたりするタイプじゃないってのは分かるし……
知ったからと言って態度が変わるとも思わないけど、それでもさ」



珍しい渋面を作ってなお整った顔立ちの女……先生こと辰森コウである。

「軽い気持ちじゃない、と言い切れる?
初めて出来た私達以外の知り合いってだけで舞い上がっていたりはしないかな?
……あんまり、こういう言い方したくはないんだけど、ね。
君の秘密は君自身、君の命の一部を握らせるようなものだ。
だからそれこそ……この人になら自分の全てを委ねても良いと思える相手にこそ、明かすべきだ。」



コウはふぅ、と小さく深呼吸。ため息ではない、深呼吸だと言い張ることにしていた。

「人付き合いをする上で、重大な隠し事を抱えたままで居たくないというのも分かるよ。
仲良くしたい相手ならなおさらだ。それでも、だからこそ、なんだよ。
その重い荷物を相手に背負わせてもいいの?
そんな風に君だけ楽になっていいの?」



「良くない、です」と小さな声が聞こえるとコウは渋面を和らげ、微笑みを浮かべる。

「いい子だ。いつか、互いの重荷を分け合える大切な人を見つけられると良いね」



そして優しく抱き締め、そっと頭を撫でた。

「人付き合い……人との距離感って難しいよねぇ……
こればかりは私も教えるの下手くそっていうか、私自身下手くそだからねぇ……」

私は……私の重荷を君に背負わせるわけには行かないから……分け合える人にはなれないけれど。
それでもできる限り、側にいるからね……