RECORD

Eno.242 栗花落 浅葱の記録

03:夢

夢に手が届きそうという感覚は、どういうものなんだろう。
僕はSF小説で遥か未来で実用化されるであろう科学を知っている。
そして同時に、それらが僕の生きている間に実用化されない可能性を知っている。

僕は僕たちが生きている間に、光速を越えられないことを知っている。
光速よりも速くFaster Than Light飛べなければ意味のない暗黒の宇宙空間で、それは致命的すぎる。
星々に手を伸ばすためには、僕らの命はあまりにも儚過ぎる。

宇宙を、あるいは深海を。
そのすべてを解き明かすためには、僕らの寿命はあまりにも短すぎる。
一日一歩、三日で三歩。三歩進んで二歩下がる。

でも、今日は面白いことを聞いた。
僕が生きている間にそれらが達成できないとしても、僕の血脈は夢に手を伸ばせるかもしれない。
そう、僕は生物学上、女だ。良い女ではないけれど。

僕の子供が僕の夢を成し遂げる。
僕の子供が僕の夢の滑走路を飛び立っていく。
僕の子供が僕の夢の大地に降り立っていく。

それは、なんて素晴らしいんだろう!!

たとえ僕が夢に届かなかったとしても。
たとえ僕が夢の前に打ちひしがれても。
たとえ僕が夢から目を逸らしたとしても。

僕の血脈はそうではないかもしれないんだ!!

ああ、今、僕は興奮している。
それは非連続性の観点から喜ぶべきことではないのに、僕は喜んでいる。
不思議な心地だ。僕の女という構成要素は、こんな単純だったのかと笑えてくる。

楽しい。楽しいよ。
僕が伸ばすこの手は、この身体は。


「すべてが礎だったんだね」