RECORD

Eno.534 有栖川 菖蒲の記録

That was ten years ago.

 
小学5年の初夏だった。
帰りが遅くなると言っていた両親は、俺が寝る時間になっても帰ってこずに。
インターホンの音で起こされた朝に、その死を警察から教えられた。

事件現場は近所の廃ビルで、揃っての投身自殺だったとか。
屋上に靴と遺書が揃えて置いてあって
犯した罪の告白と謝罪の言葉が書かれていただとか。
そういった話をされた覚えがある。

無機質なライトが照らす部屋で
警察のおじさんが俺に聞いた。

『最近、ご両親に変わったところはなかったかな?』
一般的な質問だ。

『何か悩んでるみたいでした』
状況を飲み込めないまま、俺は素直にそう答えた。

事件前の両親は、俺には隠そうとしていたけれど
時折夜中にふたりで話して、何かに悩んでいる様子だったから。

けれどそれを、聞かれるままに話してしまったばっかりに
警察もマスコミも遺書の内容を信じ込んで。
生真面目で優しかった両親はあっという間に
金を盗んで責任も取らず、子供を放って死んだ屑になった。

軽率だったなと振り返って思う。子供に言ったって仕方ないけど。