RECORD

Eno.564 安那 雪の記録

自身の肯定

人は褒めて伸びる者もいるのだという。
しかし妾は今まで『褒められる』という事はあまりされてこなんだ。
両親は放任主義じゃし、学校では…。
故に誰かから褒めそやされる、抱き締められる、頭を撫でられる事もあまりなかった。

だから。

クラスの子達から触れ合えて貰える事が酷く嬉しかった。
彼女がぬくもりを分けるように抱き締めてくれた。
虎孟が優しい手で妾の頭を撫でてくれた。

けれど同時に。

嬉しい気持ちと同時に湧き出て来る本能に抗う事が難しくなってくる。
喉が渇く。腹が空く。
それを笑顔で塗り潰す。

───

嗚呼、人の世というものは酷く面倒で厄介だ。
お陰で溶け込んで生活する羽目になった。
知らぬ事が多い故、不審がられる事も多かったが、まぁ案外何とかなるものぞ。
隙を見て襲い、喰らえば神隠しとして見做されるであろう。
…それにしても彼奴らは、喰うという事に随分手間暇をかける。
全く奇怪なものだ。理解出来ん。