RECORD
Eno.32 不藤識の記録
monologue. 『明』
その生活に、疑問を抱いたのはいつだったか。
小学校に入って、周りとの比較を認知するようになり、自分は他の人と違う生活を送っていることには気づいたけれど。
それを疑問には思わなかったはず。
そのスタンスが明確に変わったのは……確か、そう。中学校の進路相談以降か。
『不藤識』の将来が、何処にもないと知った時だ。
――――――――――――
将来は、ものづくりに携わっていくものだと思っていた。理工学系の大学に通って、良い会社に就職して、社会に役立つ何かを作る。
例えば、今より性能のいい翻訳機だったり。
進路相談の日程を目前に、そんな事を両親に話したんだけど、彼等はそれを聞いてとても悲しそうな顔をした。
理由を聞いても、中々話してくれない。
おかしな話だ。だから、白亜にも聞いた。彼女も同様、何も話してくれなかったんだけど。
その時点で、自分には知らないことが多すぎた。
白亜の事情とか、両親が何をしているのかとか、自分の立場だとか……いや、違うか。
知ろうとしていなかったんだ。
――――――――――――

いいよ。
続きは要らない。それよりも聞きたいことがある。

君、しろひめ様だよね。

問題はそこじゃなくて
不藤識の名付け、君が行ったんでしょ。

言っちゃ悪いけど、しろひめ様ってそんなに強い神秘じゃないよね。その土地限定でちょっと凄いことができるくらいの。それだけの怪奇。
俺の名前を不藤識にした理由も大体わかった。けど、名前を識にしたのは不味かったかもね。

泥を塗るつもりはないんだけどね。
13年前、ここの神社に捨てられていた俺を拾って、物理的にも神秘的にも不安定だった俺を定義したのは君だ。
この名付けで、俺の神秘に干渉したかったんでしょ。
神秘を2つに分けて、扱いやすくした。
形がよく見えるようになったから、分けられた大元の制御も効きやすくなった。
ここまで合ってる?

黙秘か。
やっぱりこれは暴かれたら不味い事なんだね。でも、俺は続けるよ。この先を識りたいから。
裏の神秘、と呼んでる方。こっちが俺の本体なんでしょ?不等式は表、後付けのガワ。この2つは別物で、人格も……一応同じだけど、外からの見え方が全く違うよね。

何言ってんの。もう遅いでしょ。
落陽明松は熱を奪う。対象は炎だけど、近ければ近いほどその神秘は拡張される。今回の対象は自分自身だ。
落陽明松は、不藤識から熱を奪っている。
同一存在だから、心意までが対象に拡張されてるんだ。
だから、『不藤識』のガワ、人格、精神はいずれ消える。

あってるでしょ?だから早く知りたいんだよ。
――俺の。『不藤識』としての寿命は、いつなんだ?
――――――――――――
残火は、今も心の内に燻っている。
それを絶やさないようにするのが、今の習慣。
きっちり白い制服に身を包んで、毎朝早くに起きて、仲の良い人には適度にノリ良く、そうでない人や先輩には丁寧に。
不平等を嘆きながらも、誰かのためになることをする。
平等を願いながら、日々を全力で生きる。
どうか。他の人は、こうなりませんように。
そんな思いを抱きながら、消えゆく熱を大事に抱えている。
今はまだ、このままで居たいから。
小学校に入って、周りとの比較を認知するようになり、自分は他の人と違う生活を送っていることには気づいたけれど。
それを疑問には思わなかったはず。
そのスタンスが明確に変わったのは……確か、そう。中学校の進路相談以降か。
『不藤識』の将来が、何処にもないと知った時だ。
――――――――――――
将来は、ものづくりに携わっていくものだと思っていた。理工学系の大学に通って、良い会社に就職して、社会に役立つ何かを作る。
例えば、今より性能のいい翻訳機だったり。
進路相談の日程を目前に、そんな事を両親に話したんだけど、彼等はそれを聞いてとても悲しそうな顔をした。
理由を聞いても、中々話してくれない。
おかしな話だ。だから、白亜にも聞いた。彼女も同様、何も話してくれなかったんだけど。
その時点で、自分には知らないことが多すぎた。
白亜の事情とか、両親が何をしているのかとか、自分の立場だとか……いや、違うか。
知ろうとしていなかったんだ。
――――――――――――
「よく来たね。今日もお疲れ様」
「じゃあ早速、今日は歴史の続きから――」
いいよ。
続きは要らない。それよりも聞きたいことがある。
「お、珍しいね」
「どうしたのかな?言ってごらん」
君、しろひめ様だよね。
「……ふむ」
「今更その話を」
問題はそこじゃなくて
不藤識の名付け、君が行ったんでしょ。
「……それで?」
言っちゃ悪いけど、しろひめ様ってそんなに強い神秘じゃないよね。その土地限定でちょっと凄いことができるくらいの。それだけの怪奇。
俺の名前を不藤識にした理由も大体わかった。けど、名前を識にしたのは不味かったかもね。
「……吾の決定に泥を塗るとは」
「其方らしくない言動じゃな?」
泥を塗るつもりはないんだけどね。
13年前、ここの神社に捨てられていた俺を拾って、物理的にも神秘的にも不安定だった俺を定義したのは君だ。
この名付けで、俺の神秘に干渉したかったんでしょ。
神秘を2つに分けて、扱いやすくした。
形がよく見えるようになったから、分けられた大元の制御も効きやすくなった。
ここまで合ってる?
「……」
黙秘か。
やっぱりこれは暴かれたら不味い事なんだね。でも、俺は続けるよ。この先を識りたいから。
裏の神秘、と呼んでる方。こっちが俺の本体なんでしょ?不等式は表、後付けのガワ。この2つは別物で、人格も……一応同じだけど、外からの見え方が全く違うよね。
「そこで止めよ」
「其方は自滅しようとしておる」
「まだその時には早い。今は――」
何言ってんの。もう遅いでしょ。
落陽明松は熱を奪う。対象は炎だけど、近ければ近いほどその神秘は拡張される。今回の対象は自分自身だ。
落陽明松は、不藤識から熱を奪っている。
同一存在だから、心意までが対象に拡張されてるんだ。
だから、『不藤識』のガワ、人格、精神はいずれ消える。
「止めよ」
「それ以上をこの場で宣言するな」
あってるでしょ?だから早く知りたいんだよ。
――俺の。『不藤識』としての寿命は、いつなんだ?
――――――――――――
残火は、今も心の内に燻っている。
それを絶やさないようにするのが、今の習慣。
きっちり白い制服に身を包んで、毎朝早くに起きて、仲の良い人には適度にノリ良く、そうでない人や先輩には丁寧に。
不平等を嘆きながらも、誰かのためになることをする。
平等を願いながら、日々を全力で生きる。
どうか。他の人は、こうなりませんように。
そんな思いを抱きながら、消えゆく熱を大事に抱えている。
今はまだ、このままで居たいから。