RECORD
Eno.424 甘露 進の記録
ある夜の日の着信音。




照れるように笑う父さんの声はどっちかてと兄貴に似てると思う。物腰も柔らかいし。
それからオレと父さんで大学の講義はどうだとか、
生活リズムはちゃんとしているかとか、
ちゃんと食べているか母さんが心配していただとか、
そんな、他愛ない話をした。


つつがなく通話が切れる。
父さんはオレが言うのもなんだけど、結構『普通の人』だ。
海が好きで、母さんとオレらの事を大事にしてくれて。
でも気が弱いとこあるから、母さんに押されっぱなしの時があって。
どこで買ったのか分からない小銭入れを大事にしてるような、普通の。
……きっと、裏世界の事なんて全然知らねーんだろうな。
そして、オレらも裏世界の事は迂闊に言っちゃいけない。
神秘氾濫の、元になるから。

あんまり覚えていない。
今まで何となくオレらの人生と異能は
うまく溶け込んでいた感覚がある。
当たり前に存在していたから、それでよかった。
それでも、言うに言えない。
今はもう、『当たり前』じゃない。
表で言ってしまったことで、
このチカラが揺らいだらどうするんだ?
オレと神秘という二つ一組が。

繋はこの前帰りが遅いとオレをどやしてきたのに、
今日はそっちが帰りが遅い。どういうこったよ。
もしかして裏にいるのか。ふざけやがって。
最近なんだか急に考えることが多くなって、
ひとりでいるとすげー変な気持ちになる…
…ことが、稀にある。
だから明日はどっか行って、人間と会う!
うまいメシも、食う!
そう決めたとなればあとはもう、
スマホを充電器に差して、
ベッドにころがるだけだった。
羽毛の入った枕は好きだ。昔を思い出すから。
甘露 真上(アマツユ マガミ)
ある夜の日の着信音。
「もしもし、父さん?何かあった?」

『元気にやってるか?進。
もう二人が大学行って1か月以上経つし、
たまにはこっちから電話をかけてみようと思ってね』
「んー?元気元気。有り余ってるくらい。
ってーか、高校ん頃からもう静岡には居なかったんだし、
今更感あるだろ、それ」
「何だよ、寂しーのかぁ~?」
照れるように笑う父さんの声はどっちかてと兄貴に似てると思う。物腰も柔らかいし。
それからオレと父さんで大学の講義はどうだとか、
生活リズムはちゃんとしているかとか、
ちゃんと食べているか母さんが心配していただとか、
そんな、他愛ない話をした。

『繋にも電話したんだけれど、
ちょっと忙しいみたいで出なかったんだよ。
また進からも伝えておいてくれないかな。
仕送りの事もあるから』
「あいつが?珍しーのな……
ん。分かった、言っとく。
……ん、へいへい。じゃあまたな、おやすみー」
つつがなく通話が切れる。
父さんはオレが言うのもなんだけど、結構『普通の人』だ。
海が好きで、母さんとオレらの事を大事にしてくれて。
でも気が弱いとこあるから、母さんに押されっぱなしの時があって。
どこで買ったのか分からない小銭入れを大事にしてるような、普通の。
……きっと、裏世界の事なんて全然知らねーんだろうな。
そして、オレらも裏世界の事は迂闊に言っちゃいけない。
神秘氾濫の、元になるから。

(オレと兄貴って、異能の事、親に話した事あったっけ?)
あんまり覚えていない。
今まで何となくオレらの人生と異能は
うまく溶け込んでいた感覚がある。
当たり前に存在していたから、それでよかった。
それでも、言うに言えない。
今はもう、『当たり前』じゃない。
表で言ってしまったことで、
このチカラが揺らいだらどうするんだ?
オレと神秘という二つ一組が。

「……なんか、めんどくせーなあ……」
繋はこの前帰りが遅いとオレをどやしてきたのに、
今日はそっちが帰りが遅い。どういうこったよ。
もしかして裏にいるのか。ふざけやがって。
最近なんだか急に考えることが多くなって、
ひとりでいるとすげー変な気持ちになる…
…ことが、稀にある。
だから明日はどっか行って、人間と会う!
うまいメシも、食う!
そう決めたとなればあとはもう、
スマホを充電器に差して、
ベッドにころがるだけだった。
羽毛の入った枕は好きだ。昔を思い出すから。