RECORD

Eno.424 甘露 進の記録

甘露 真上(アマツユ マガミ)

甘露 真上アマツユ マガミ
甘露兄弟の父。海に関する仕事をしている。
昔から出張は多いが、家族仲は良い。
まったく普通の人間であり、
『神秘』については知らない様子。



ある夜の日の着信音。

「もしもし、父さん?何かあった?」


『元気にやってるか?進。
もう二人が大学行って1か月以上経つし、
たまにはこっちから電話をかけてみようと思ってね』


「んー?元気元気。有り余ってるくらい。
ってーか、高校ん頃からもう静岡しぞーかには居なかったんだし、
今更感あるだろ、それ」


「何だよ、寂しーのかぁ~?」



照れるように笑う父さんの声はどっちかてと兄貴に似てると思う。物腰も柔らかいし。

それからオレと父さんで大学の講義はどうだとか、
生活リズムはちゃんとしているかとか、
ちゃんと食べているか母さんが心配していただとか、
そんな、他愛ない話をした。

『繋にも電話したんだけれど、
ちょっと忙しいみたいで出なかったんだよ。
また進からも伝えておいてくれないかな。
仕送りの事もあるから』


「あいつが?珍しーのな……
ん。分かった、言っとく。
……ん、へいへい。じゃあまたな、おやすみー」




つつがなく通話が切れる。

父さんはオレが言うのもなんだけど、結構『普通の人』だ。
海が好きで、母さんとオレらの事を大事にしてくれて。
でも気が弱いとこあるから、母さんに押されっぱなしの時があって。
どこで買ったのか分からない小銭入れを大事にしてるような、普通の。

……きっと、裏世界の事なんて全然知らねーんだろうな。
そして、オレらも裏世界の事は迂闊に言っちゃいけない。
神秘氾濫の、元になるから。

オレと兄貴って、異能の事、親に話した事あったっけ?


あんまり覚えていない。
今まで何となくオレらの人生と異能は
うまく溶け込んでいた感覚がある。
当たり前に存在していたから、それでよかった。

それでも、言うに言えない。
今はもう、『当たり前』じゃない。
表で言ってしまったことで、
このチカラが揺らいだらどうするんだ?
オレと神秘という二つ一組が。


……なんか、めんどくせーなあ……



繋はこの前帰りが遅いとオレをどやしてきたのに、
今日はそっちが帰りが遅い。どういうこったよ。
もしかして裏にいるのか。ふざけやがって。

最近なんだか急に考えることが多くなって、
ひとりでいるとすげー変な気持ちになる…
…ことが、稀にある。
だから明日はどっか行って、人間と会う!
うまいメシも、食う!


そう決めたとなればあとはもう、
スマホを充電器に差して、
ベッドにころがるだけだった。

羽毛の入った枕は好きだ。昔を思い出すから。