RECORD

Eno.139 浮季草 斂華の記録

着飾るという、一つのバッド・エンド

[][稲城通り商店街]
斂華(れんげ) [Eno.139] 2025-05-18 00:01:57 No.234205

>>234016
「これは……どっちかと言うと、鎧なんで。」

 髪を染め、着飾る事が目的ではないと言う。
 自分を守るための、身にまとう警戒色の様なものであると。

「着飾るってなると、ちょっと、まあ、恥ずかしいっすね。」

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 自宅のベッドの上でスマホをいじっていて、髪を染めた女子が映る度に思う。去年から、髪を染めた理由だ。
 高校に入ってから──いや、裏世界に入って、完全に変わってから、色々と絡まれる機会が増えた。
 これが、治安が悪くなっただけなのか、身体が成長したからなのか、神秘の影響なのかは分からない。

 ただ、髪を切ってからは明らかに少なくなった。女らしくする必要も無くなったから、多少短くしても問題無いって判断して短くした結果だけれど。
 だから、たぶん、見た目の問題。

 母
「ああそれ本当にそうだよ。
 髪染めたりするとぐっと減るの。斂華も染めて良いよ!絶対楽になるから!」


 高校に入って暫くしてから、染めてる人を度々見かけたから、染めてみようかと思って母に相談したらノリノリで返された。母は身長が私より低いながらも茶髪に染めているから、かなり信憑性が高い。

 どうしようか悩んだけど、一旦全部染めるのは怖いから、インナーカラーを試してみることにした。
 色も付けられるというから、髪留めの黄色にしようかと思ったけど、色合いが被るからと言われ、青色にしてもらった。

「……すっご。」


 やってもらったら案外、いい感じに威圧感は出ていると思った。実際、この髪にしてから、絡まれる事は全く無くなった。知り合いにはちょっとだけ心配されたし、青色になったのは、少しだけ複雑だったけど。
 
 ただ、自分を着飾るなんて、考えた事は無かった。
 だって、女装して女子の中に紛れ込む・・・・・・・・・・・・・なんて、不誠実にも程がある。

 ……なんて考える辺り、今でもどこか、元に戻りたいと思ってるのは確か。男らしい、というか、男だからできる馬鹿話をしている男子クラスメイトを羨ましく思ったり……嫉妬したりする。
 そんな未練も、どこかにある。でも、それを表立って言うことはできない。
 原因はまだ隠さないといけないし、そうでなくたって、こんなセンシティブな問題、友人どころか、親にだって相談することもできない。
 ……だから、知り合ったばかりの年上の"同性"は、何かと都合が良かったのかもしれない。
 イヨさんと話して、初めて今の自分の問題について他人に話して、今の自分の姿を着飾る……わざと抵抗のあることをして、吹っ切れる事が、必要なんじゃないかと思い始めた。
 それは即ち、その結果如何では、全てを諦め、受け入れるということ。男に戻ることを諦め、女として過ごすということ。
 これは、よく言われる『自分らしさ』が大事とか、そういう話とは全く別の問題。過去に起きた事件の傷を、治さずに、そのままにするという選択。
 一つのバッド・エンド。
 でも、そうするしか無いんじゃないかと思い始めているから、今こうしてスマホを覗いて、衣装を確かめている。

 イヨさんが提示した案のうち、第一案のフリフリのドレスを着る勇気は無い。
 第二案の袴は、どうせ今後着る機会がありそうだし、落ち着いているから割と嫌じゃない。
 そして第三案に提示された──何か、地雷系とか言うらしい──の衣装を調べてみると、第一案より落ち着いた感じはする。だけど、それを着た自分を想像して思う。



「……本当に似合うか、これ!?


 自問自答して、枕に頭をボフンボフンと埋めて、悶絶した。

 ……別の話になるけど、インナーカラーには結構なお金がかかるというのは、割と盲点だった。
 脱色だけなら安いけど……一度この色って決めちゃうと……変えづらいんだよなあ。
 バイトを始めてからも、鎧は結構有効だったので、そこは利点かな。