RECORD

Eno.43 神林 雨の記録

さいわい

思えば。
自分自身の幸いを考えたことが無かった。
いつも、他者の為に祈ることはあれど。
自分の幸いの為だけに祈ったことなんてなかった。

幸い。
私にとっての幸い。
幸いだと思えるもの、あったのか。
いや、わからない。

私一人が掬われても。
私一人が幸いになることはできない。
それだけは、どうしようもない程に理解している。

この世に在って、生きている実感が無い。



「俺は隣人たちには」
「神林には、幸いであって欲しいとは思っている」
「お前が『自分は幸いだ』と言えないなら、俺はちょっと嫌だな」


「私がそうしたいから、たくさん祈りましたので」
「ええ、雨さんに助けられた分、助ける想いでしたから」




それでも、少し。
この世って捨てたもんじゃないって思えるようには、なったよ。
私の幸いが、こちら側・・・・に在ると信じられるようには、なったよ。

ただ。
が必要ならば。
私がそこに在って、嬉しそうな彼らがいたら。
それだけでいいと思うのだけれど。

それが、私の思う幸いなのか、何も言えなかった。