RECORD
Eno.427 大狼拾希の記録
0/1:大狼拾希
武蔵野凛…眼鏡の秘書の女性に見送られて市役所を去る。
あの淡々とした態度を見ていると何だか頭の片隅が疼くようなくすぐったい感覚に陥る。
その感覚はフツっと途切れ、体全身に言葉にできない揺らぎを感じる。
まあ、見た目では何も変わっていないのだろうけど。
『リセット』だ。

大狼拾希はそう呟いてスマートデバイスを取り出す。
恐らく異能の発動を感知し自動的に表示されたのだろう。
画面に従って報告を行う。この異能に関しては制御が一切できない。
外見上の変化は怪我や病気等をしていない限りは発生しない為、今回は簡単な報告を行う。

誰かに見下されているような気がして振り返って見ると、誰かが建物の奥へと消えていくのが窓にチラと見えた。

鼻の頭を掻いてからその場を後にする。



いつの間にか背後から近づいていた女学生。
ノーブル会の制服を着た戸籍上は姉という扱いの大狼アザミを流れるようにスルーして歩いていく。





わかってるよ、と横にいる少女…というにはいささかでかい女性にデバイスの履歴を見せる。
アザミはうんうんと頷いてから前に立ちふさがると手を伸ばし、


払おうとする手を素早く躱して撫でまくる手をようやく払い除けて、拾希は深く息を吐いた。



あらあらと肩を竦める姉を放って、小走りで目的地の方へと向かう。
背後の女性はゆらゆらと今は存在しない尻尾を揺らすように立ちすくんでいたが、ふと思いついたといった様子で手を振り


カラカラと笑いながら去っていくその背を睨んで、改めて自身の道へと目を向ける。
彼女どころか友人ができるかすらわからないのだ。
心の奥底で燻っている劣等感と不安。
どす黒い沼のように淀んだそれらが、じわりじわりと足元に広がって身体を沈めようとしている気がする。
ふんと鼻で息を吐き、重たい足を持ち上げて一歩前へと踏み出す。
記憶も自己も過去にないのであれば、未来に作るしか無いのだ。
そう自身に言い聞かせながら少年はその道を歩き始めた。
あの淡々とした態度を見ていると何だか頭の片隅が疼くようなくすぐったい感覚に陥る。
その感覚はフツっと途切れ、体全身に言葉にできない揺らぎを感じる。
まあ、見た目では何も変わっていないのだろうけど。
『リセット』だ。

「これ、報告しないとダメなんだよな」
大狼拾希はそう呟いてスマートデバイスを取り出す。
恐らく異能の発動を感知し自動的に表示されたのだろう。
画面に従って報告を行う。この異能に関しては制御が一切できない。
外見上の変化は怪我や病気等をしていない限りは発生しない為、今回は簡単な報告を行う。

「管理の形が変わるってだけかと思ったけど、思いの外大変そうじゃないか…まあ、いいけど」
誰かに見下されているような気がして振り返って見ると、誰かが建物の奥へと消えていくのが窓にチラと見えた。

「好き勝手はできない。…するつもりもないって。学生生活をおろそかにしない。だろう?わかってますよ」
鼻の頭を掻いてからその場を後にする。

「送ってこうか~?」

「遠慮つかまつる」

「ごむたいな~」
いつの間にか背後から近づいていた女学生。
ノーブル会の制服を着た戸籍上は姉という扱いの大狼アザミを流れるようにスルーして歩いていく。

「顔色良いね。リセット?」

「…おい」

「へへ、このくらいの会話は表でしても大丈夫でしょ」

「お前なあ……まあ、そうだよ。さっきだ」

「報告、忘れちゃダメだよ」
わかってるよ、と横にいる少女…というにはいささかでかい女性にデバイスの履歴を見せる。
アザミはうんうんと頷いてから前に立ちふさがると手を伸ばし、

「やめろ撫でんな」

「照れんな照れんな~♪その調子でちゃんとしっかり過ごすんだよ」
払おうとする手を素早く躱して撫でまくる手をようやく払い除けて、拾希は深く息を吐いた。

「送らなくて良いから。それに、行き先は別だろ」

「それもそうだけどネ。つっけんどんとして…お姉ちゃん寂しいわぁ」

「思ってもないこと言うんじゃねえ。構われたいなら沙繰やアホども相手にやれっての」
あらあらと肩を竦める姉を放って、小走りで目的地の方へと向かう。
背後の女性はゆらゆらと今は存在しない尻尾を揺らすように立ちすくんでいたが、ふと思いついたといった様子で手を振り

「彼女!出来たらまっさきに紹介するんだぞ~!」

「し・ね・え・よッ!」
カラカラと笑いながら去っていくその背を睨んで、改めて自身の道へと目を向ける。
彼女どころか友人ができるかすらわからないのだ。
心の奥底で燻っている劣等感と不安。
どす黒い沼のように淀んだそれらが、じわりじわりと足元に広がって身体を沈めようとしている気がする。
ふんと鼻で息を吐き、重たい足を持ち上げて一歩前へと踏み出す。
記憶も自己も過去にないのであれば、未来に作るしか無いのだ。
そう自身に言い聞かせながら少年はその道を歩き始めた。