RECORD

Eno.609 結祈 夜呼の記録

褐色の夢



夜空がオーロラで虹色に揺れる。
星の降るようなその場所はあたり一面が海だ。

大樹の下に何かがいる。
それはもう何かの形を成していない。
それは、猫のようで、人のようで……山羊を思い出させる。

これは夢だ。
だからめちゃくちゃなのだ。

何かは島の淵で海を眺める。
海は宇宙で、宇宙だとわかるのに底なしで青い。

何かは歌う。
歌っている。
それは誰かを呼ぶ愛の歌。

どれくらいそうしていただろうか?
浸された水辺の宇宙に白い繭が映る。

何かは、猫のように海に飛び込む。
繭に向かって真っすぐに泳いでゆくそれは何が起きたかわからない力で弾き飛ばされ
島に打ち上げられてしまった。

海は海に戻り、何かは──褐色の肢体の美しいヒトになった。

褐色の手が宙をつかむ。
その喉からは嗚咽が漏れた。

哀しかった。
彼女の想いが、熱が、後悔が。
何億の時間をかけて無かった事にされた旅が。
……それを一体、幾度繰り返したのだろう?
ただ愛おしい人に会いたいと、それだけで。

嗚呼

これを

恋と呼ぶのか

愛おしく哀しい褐色に手を伸ばす。
彼女の名前を呼べば虹色の瞳がこちらを向いた。

■■ちゃん……?



誰かと間違えられている。
誰と私を…?

その疑問を抱く瞬間、距離を無視して目の前に褐色の彼女の顔が現れた。

■■の匂い…ちがう、でも、似てる



私の手をとり、そこに顔を近づけて匂いを嗅ぐと彼女はそういった。





私は目を覚ます。
手首が痛い。また血が出たのか。
傷口なんてもうないのに。
頭がふらふらして動けない、私はもう一度目を閉じた。

──ああ、やっぱり、あの歌が聞こえる。