RECORD

Eno.665 夜行希逸の記録

歳を重ねる三

『お誕生日おめでとうねぇ、きぃちゃん』



夜になって電話越しに聞くばあちゃんの声が、俺の名前を呼ぶ。
ばあちゃんにとっては、いつまでも俺はきぃちゃんだ。
そりゃそうだ、だってばあちゃんも夜行の姓だし、なんならばあちゃんの息子……父さんだってそうだった。

俺は週一回はばあちゃんに会いに行く。
近いけど、北摩から離れたところ。

週一回は、俺はきぃちゃんと呼ばれに行く。

週一回だけ、俺は希逸であるらしい。

ちゃんとご飯食べてますよ、今日はこんな講義がありましたよ、ばあちゃんはどうですか、そんなことを少し話してから電話を切った。


ばあちゃん、俺は、貴方の孫がなくなってしまわないように、貴方に会いに行くのです。
次の一年も、きっと同じように、そうするでしょう。