RECORD

Eno.623 飯田飯太の記録

神秘レベル2

「フラグメント…本格的な裏世界探索の前に使うか…」


市長の秘書から支給された謎の物質。
少し怖いが…危険な裏世界で活動するのに使わないという選択肢は無いだろう。

フラグメントに触れると使い方を"理解"する。
一瞬躊躇してからフラグメントを使用する。

身体中に何かチカラのような物が駆け巡る。
それが終わると同時に、PDAから音が鳴る。

「ん?何の音だ?特にアプリは走らせてなかったはずだけど…」


不思議に思いながら、PDAを開く。

「我が半身よ、喜ぶと良い。今のフラグメントとやらのお陰で、我が力も強くなった。我が権能も少しならば行使する事が出来るだろう。」

いつぞやの創るモノシェフがPDAのメモアプリで話しかけて来た。

「は…?」


思考が止まる。急速に背筋が凍っていく。
得体の知れないバケモノが、自分の中で育っていく事に恐怖を覚える。

「案ずるな、我が半身よ。我らは二心同体、力のバランスは均等である。それに、我に悪心は無い。我らが悲願の為に存在しているのみ。」

信じられるものか、今だって勝手に心を読みやがって。それに悲願って何だよ。

「そう言ってくれるな、その身の内にいるのだから聞こえてしまうのは仕方ないだろう。…悲願に関してはまだ言えぬ。今我らが意思疎通が出来ているのは奇跡なのだ、そのバランスを崩したくはない。力をつけ、時がくれば話そう。」

誠意のあるような話し方だが、はぐらかしているようにしか聞こえない。
悲願の内容が分かるまではフラグメントを使うのは控えた方がいいだろうか?

「待て、本当に言えるのはまだコレくらいしかないのだ。また力をつけた時に言えない理由を話そう、故に力を得るのを止めようとしないでくれ。」

俺は悲願が達成されなくても別にいいし、話せない理由にも興味は無い。

「ええい。我の悲願ではなく、我らの悲願だというのに…忘れているのは仕方ない事なのだが…。…ならば、我が半身よ。我の力を自由に使えるように貸し与えよう。"裏世界"での探索や戦闘に役立つ物だ。」

俺らの悲願…ね。
探索や戦闘に役立つって具体的にどんな力なんだ?

「おお。乗り気か、我が半身よ。我の力の中で探索や戦闘に役立つのは、現を書き換える力だな。本来は世界に命令を下し、意のままにする力なのだが、まだ力が弱い故に、効果範囲が狭かったり、曖昧な命令は実行できないといった制約があるのだが…それでも充分役には立つであろう。ほら、何と言ったか…キッチリとした命令にピッタリな言葉を、我が半身は知っておる筈だ。」

まさか…プログラミング言語の事か?そんな物でどうする?

「そうだ、そのような名前であったな。説明するより実際やった方が分かりやすかろう。例えばコレでよかろう…HelloWorld、実行」

簡単なテストコードを書いてそう言うと、Hello Worldと空中に文字が浮かんだ。
原理は後で聞き出すとして、目の前の文字に興奮が隠せない。
あの日、プログラミングを始めた時と同じ興奮が俺を襲った。
上手いやり方だ。乗せられてやろう。

「何と!では取引成立であるな?」

ああ、暫くよろしく頼む。
だが、怪しい動きを見せたら速攻で叩き出すからな。

「今はそれで良い。こちらこそよろしくだ、我が半身よ。」

この決断が何を齎すか、それが分かるのはまだ先の事になるだろう。
願わくば、悪い事になりませんように。