RECORD
Eno.226 善阪八坂 蕪花の記録
0・自己紹介と問答の浅漬け
私の名前は善阪八坂蕪花。…いつも、何て読むの?なんて言われてしまう。正解は”いさかやさか かふか”と読む。
カフカという作家が好きとか、カラスが好きとかではなくて――両親が蕪の漬物が一番好きだからなんて理由でつけられた素朴な名前だ。家は漬物を扱う商売を代々していて、そういう家に私は生まれている。
親はそんな漬物の会社の社長で、いっつも忙しそう。偉い人なのに変にフットワークが軽すぎる両親は、腰を落ち着ける前に西へ東へと行ったり来たり。(先日は鳥取へ行ってて、SURFに砂漠でピースしてる写真が届いていた)
私は祖父である柴爺…善阪八坂 柴名に面倒を見てもらいながら暮らしている。……いや、ほんとはどっちかっていうと、私が柴爺の面倒を見てるというのが正しいかも。
ちなみに柴爺は漬物屋と喫茶店とメイド喫茶をすべて足したようなカオスなお店の店主です。――つけものメイド喫茶っていったい何を食べて思いついたのよ。いや漬物しかないのよね
通っている学校は、国際貴女学院っていうお嬢様学校。
親の勧めで入ったけど、なんだかしっかりしなきゃって思うような学校。――学校は楽しいけど、将来の目標はあんまり決まってない。そんな感じの平凡な人間だ。

そんな私に、家族に言えないことが出来た。先日、漬け物の配達を終えた帰りに近道をしようとしたら変なところ――裏世界にに迷い込んだ。そこから助け出されて、市役所に呼び出されて。様々なことを説明された。神秘、裏世界。

特筆事項、老舗の漬物屋の一人娘。それくらいだ。
生まれてこのかた、超能力やら異能やら、心霊写真すら縁がなく。全くもってその非日常が自分自身がと繋がったことがピンとこなかった。神秘に触れた人間は、神秘を帯びる。自分がなにかしらの異能に目覚めることもある、らしい。今のところ全くない。いっそドラマチックに何かあれば自覚もあったかもしれないけれど、あったらあったらで大変なんだろうな……。

思案から浮上する。奥の方から祖父の声がした。今日も大柄な体でちゃっちゃと季節の漬物を仕込んでることだろう。祖父なりの仕込みを含めた手際の良さには毎回ちょっと感心する。

戸をちょっと開いて、ふさふさの白い髭と笑顔がひょっこり顔を出す。

ハキハキとした声音に、はいと返事をした。
私は柴爺のお店でアルバイトとして働いている。主に喫茶店のホールと、配達業務。あと漬物の仕込み。――働き始めたのは別にアンティーク趣味なメイド服が可愛いからではない。時給がいいから、それだけだ。
甕に指定された漬物を入れ、きっちりと並べていく。そうしていると神秘に対しての堂堂巡りの思考はどこか隅に追いやられて、その代わりに別の悩みを思い出した。

英語の小テストは、不合格になると少しだけ宿題が増える。
神秘に関わっても、日常の悩みが終わるわけではない。
自分がやることは変わらないだろう。

神秘への相対であろうと、喫茶店のアルバイトも、学業も然り。
カフカという作家が好きとか、カラスが好きとかではなくて――両親が蕪の漬物が一番好きだからなんて理由でつけられた素朴な名前だ。家は漬物を扱う商売を代々していて、そういう家に私は生まれている。
親はそんな漬物の会社の社長で、いっつも忙しそう。偉い人なのに変にフットワークが軽すぎる両親は、腰を落ち着ける前に西へ東へと行ったり来たり。(先日は鳥取へ行ってて、SURFに砂漠でピースしてる写真が届いていた)
私は祖父である柴爺…善阪八坂 柴名に面倒を見てもらいながら暮らしている。……いや、ほんとはどっちかっていうと、私が柴爺の面倒を見てるというのが正しいかも。
ちなみに柴爺は漬物屋と喫茶店とメイド喫茶をすべて足したようなカオスなお店の店主です。――つけものメイド喫茶っていったい何を食べて思いついたのよ。いや漬物しかないのよね
通っている学校は、国際貴女学院っていうお嬢様学校。
親の勧めで入ったけど、なんだかしっかりしなきゃって思うような学校。――学校は楽しいけど、将来の目標はあんまり決まってない。そんな感じの平凡な人間だ。

……うーん、やっぱり爺様にも……話しちゃダメなのよね
そんな私に、家族に言えないことが出来た。先日、漬け物の配達を終えた帰りに近道をしようとしたら変なところ――裏世界にに迷い込んだ。そこから助け出されて、市役所に呼び出されて。様々なことを説明された。神秘、裏世界。

――いやいや実感わかないのよ、だって私変な力もなんもないし
特筆事項、老舗の漬物屋の一人娘。それくらいだ。
生まれてこのかた、超能力やら異能やら、心霊写真すら縁がなく。全くもってその非日常が自分自身がと繋がったことがピンとこなかった。神秘に触れた人間は、神秘を帯びる。自分がなにかしらの異能に目覚めることもある、らしい。今のところ全くない。いっそドラマチックに何かあれば自覚もあったかもしれないけれど、あったらあったらで大変なんだろうな……。

おぅい、かふか
思案から浮上する。奥の方から祖父の声がした。今日も大柄な体でちゃっちゃと季節の漬物を仕込んでることだろう。祖父なりの仕込みを含めた手際の良さには毎回ちょっと感心する。

なぁに、柴爺様
戸をちょっと開いて、ふさふさの白い髭と笑顔がひょっこり顔を出す。

「すまんな。最後に善八漬けと糠漬け、配送用の甕に詰めといてくれや」
ハキハキとした声音に、はいと返事をした。
私は柴爺のお店でアルバイトとして働いている。主に喫茶店のホールと、配達業務。あと漬物の仕込み。――働き始めたのは別にアンティーク趣味なメイド服が可愛いからではない。時給がいいから、それだけだ。
甕に指定された漬物を入れ、きっちりと並べていく。そうしていると神秘に対しての堂堂巡りの思考はどこか隅に追いやられて、その代わりに別の悩みを思い出した。

あ、終わったら――明日の英単語の小テストの予習しなきゃ
英語の小テストは、不合格になると少しだけ宿題が増える。
神秘に関わっても、日常の悩みが終わるわけではない。
自分がやることは変わらないだろう。

できることを、ひとつひとつ。そこらへんは、どれもかわらないかな
神秘への相対であろうと、喫茶店のアルバイトも、学業も然り。