RECORD

Eno.435 皐月 恭佳の記録

死因

この記録には人を不快にさせる可能性のある表現があります。

……あれは、高校3年生になってからしばらくした初夏の頃だったかな。
あの日の放課後、部室で脚本を書いてたんだ。
『黄金の林檎』。文化祭で発表するはずだった演劇。
やっとの思いで書き上げて、「やった~!」って思ってたその時。

銃声が聞こえた。

……最初は「風紀委員の演習かな?」って思ったけど、あまりにも何度も聞こえて、あまりにも悲鳴が上がってて。
テロ、だったんだよね。まだ私たち異能力者に反感抱いてる人多かったからさ。
SNSとかニュースとかでたまに見たけどさ、こんなことになるなんて思わなかった。

学園の中では戦闘の演習とかあってさ、結構戦い慣れてる人も多かった。
けど、いざ人を殺そう!ってなったら無理でしょ?中学生か高校生しかいないんだよ?
だからみんな死んだ。部室の窓を覗いたら、外にいくつか死体があって……中には友達もいた。
見た時、盛大に吐いちゃったよ。もう顔も覚えてない友達なんだけどね。

どうにか隠れたり、逃げたりできないかなって、蹲りながら考えてた時。
同級生で風紀委員長のアサヒちゃんが部室に駆け込んできて、誰か少しでも戦える人を探してた。
「誰か、時間を稼ぐだけでも」って、懇願してきた。
……演劇部の中で、ただ私だけが名乗り上げたんだ。
「部長だからね、部員を守らないとでしょ?」って、みんなの前で啖呵を切った。
さっきまで吐いてて、逃げれないかなって考えてた部長がだよ?
演劇に頭犯されすぎだよ。

そうやって私たちは寄せ集めで戦った。
私は異能力の性質上、前に出てみんなを攻撃から守ったり、撹乱とかしてた。
最初だけ上手く行ってたんだけどね、一回撃たれたら痛くて動けなくなっちゃって。
私が倒れたせいで一気に戦線が崩壊した。
死ぬ間際に見た光景は、さっきまで一緒に戦ってた人が撃たれる姿だった。

アサヒちゃん、最後まで戦ってたけど結局どうなったんだろうな。
私、死んじゃったからなぁ。どうなったかわかんないんだ。
多分死んじゃったんだろうな、だってあんなに撃たれてて、まだ動けるのが不思議な位だったもん。

死の間際、アサヒちゃんの炎の音だけが聞こえる中、少し考えてたんだ。
なんで私たちはこんな目にあったのかって。

異能力は先天的なもので、私たちは選んだ訳じゃないんだ。
私はただ、この力を大好きなもの演劇に使いたかっただけなのに。

ねぇ



「……どうしてもっと早く助けにきてくれなかったの?」



神崎千代乃ちゃん。
『黄金の林檎』の主役候補の君。
私たちを守るつもりだったなら、もっと早く来てよ。

言ってもしょうがないことだけどさ。