RECORD

Eno.579 真里谷 関の記録

memo.103


 怪奇がまとめて出たとかで局は慌ただしい様子を見せていて、そういうのは対策課の役割なんじゃ、と内心思いながらも久しぶりにまともな戦闘に参加した。最近知り合った叶さんが人間離れした動き(実際、身体を動かしているのは人間じゃない! しかし思った以上にすごい反動がありそうだけど大丈夫なんだろうか)で怪奇を華麗に切り倒していくのを横目に戦えば、やっぱり怪奇といえど刃を突き立てるのは良い気分がするものじゃない。なんせ、北摩に来るまでは殴り合いの喧嘩だってしたことがなかったんだ。それが今じゃ武器を付けて、なんて嘘みたいだ。

 「ここで寝ていてはならない。ここでは、もう忍耐も憐れみも必要でない。今は剣と怒りの時であって、恵みの時ではない」とルター先生は言う。裏世界はそういう場所かもしれないし、重い過去を持っている人たちにとってはその通りかもしれない。
 でも正直なところ、俺は出来れば寝ていたい。ちょっと悪夢寄りな夢でも見ているような不思議で面白い景色を覗きながら。だけどそれは自分がやるべきだったことを誰かに肩代わりさせるってことだ。その誰かが武闘派ならともかく、乗り気じゃない人だったとしたら。それどころか、肩代わりしてくれる人がいなかったら。そう思うと、裏世界をうろつくには自分や周りの人の身を守るだけの力が必要なのはやっぱり間違いなくて。そうでなくても、助け合おうと言ったばかりだし。
 とはいえ、とはいえ────

 こんなことを考えているのは自分だけじゃないはず。だけど、まあ、あえて人に向けて声に出すようなことでもない、気がする。もしかするとあの奇妙なモノレールの駅で出会った愛染さんも、そういうことだったのかもしれない。

 覚悟は、ない。なければいけないんだろうか?