RECORD

Eno.158 墨井 志世乃の記録

🧸

お父さんは、わたしに『決まりごと』を伝えるとき、
いつも、言っていることとは何か別のことを考えているみたいだった。



「しよの」

「もし、自分のやりたいことだけに夢中になって。
 本当に大事なことをほったらかしにするようだったり、
 誰かに迷惑をかけた時、自分のことばかりかまってしまうようだったらね」


「だったら?」


「……君の部屋をきれいに片付けなくてはならないし、
 もっと私たちに見える場所に居てもらわなくてはならなくなるよ」


何か、たくさんのことを考えていて。
その中から、わたしに伝えなければいけないこと、伝えたいことを上手に選んでいる。
そんなふうに見えた。

「……だいじょうぶ。ちゃんとやれるよ、お父さん。
 この子たちも、ほかのことも、大事にする」


考えることも、思うこともいっぱいで。みんなに追いつく前に、言葉に出てこないから。
わたしも、そうなりたいと思ったの。



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「……」



「にゃー」

「ぬー」

* すねをこする *


裏世界、あざやかな夕焼けの場所。
わたしの鞄につけてる子たちはそこだと大きくなって、動いて、おまけに鳴くみたいだった。
ちょっとだみ声だけど…… とってもかわいい。

これって、ありえない。でも、ほんとだよ。 りよとに言っても、ぜったい信じてくれない!

「……さわっても、いい?」

* 競って身体を差し出す *


キーホルダーの子でも、大きくなったらお部屋のぬいぐるみそっくり。
でもお部屋の子と違ってほんのりあったかくて、毛並みは少しざらざら。
人なつっこい野良猫をさわった時に似ている。
……そうなったらいいなって、思ってた。 思ってたから、そうなったのかな?

ひとりで行くのは少し怖かったけど。
この子たちがいるって知ったら、勇気も出るかな。


「……うん。
 ね、ひみつのお仕事、がんばろうね」


「にゃー」